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薛 珠麗(せつ しゅれい)のブログ
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# 『橋からの眺め』『ガラスの動物園』の男たち
おかげさまで、昨日より参加申し込みの受付を開始した
アメリカ名作戯曲ワークショップ(『橋からの眺め』『ガラスの動物園』)
たくさんのお申し込みをいただいています。

‥‥というより、『ガラスの動物園』の女性に限っていえば、
定員の3倍を超えるお申し込みがありました。
追加開催が出来ないかと、現在検討中です。

わたしは『橋からの眺め』は男性にとって非常に魅力的な戯曲だと考えています。
先日ナショナル・シアター・ライヴで上映されたイヴォ・ヴァン・ホーヴェ
演出版を見てそれを実感された方も多いのではないかと思います。

主人公エディは、家族を守るために港で荷揚げの仕事をする日々を
淡々と生きる、一見ごく単純な男ですが、自分の心に起きていることが
どうしても認められずに悶え苦しみます。彼は愛してはならない相手、
娘のように育てている姪のキャサリンを、愛してしまったのです。
その果てに、とうとう、彼の暮らす社会で最も憎まれる行動、決して
赦されない行動に、出てしまうのです。

エディが相談を持ちかける弁護士アルフィエーリは、全てを目の当たりに
しつつ、崩壊を食い止められなかったという、後悔に苛まれます。
そしてエディを襲った悲劇を、時代や場所を超越した眼差しで見つめ、
観客に語りかけます。

ニューヨークに住むエディ一家を頼ってイタリアからやってくる親戚の
ロドルフォは、エディの悲劇の発端となる人物です。
明るくて器用で賑やかでおしゃべりで夢見がちで、一見軽佻浮薄な青年に
見えますが、現実や人の心を真っ直ぐに見つめる誠実さと抜け目なさと、
そして夢を夢に終わらせない底力のようなものを持った、
男気のある人物だと思います。

ロドルフォの兄マルコは更に男気がある人物です。弟のように余計なことを
喋らず、国に残してきた病気の子供と働き者の妻のことを、
ひたすらにひたすらに、想っています。大切な人が脅かされた時には、
命さえも厭わない__彼の中に流れているのは、紛れもなくイタリアの、
それも、シチリアの血です。

わたしは何故だか業の深い戯曲に多く携わってきた気がしますが、
「一番業の深い戯曲はどれだったか」と人に訊ねられた時には、
決まって『橋からの眺め』と答えています。
17年も前になりますが、tpt(シアタープロジェクト・東京)が
わたしの師の一人であるロバート・アラン・アッカーマン演出で上演した
際、わたしは戯曲の翻訳と演出家の通訳兼助手を務めました。
エディ役の堤真一さんは当時、34歳でした。キャサリンの父親のような
年齢の俳優が演じるエディにも苦悩がありますが、キャサリンと色々な意味で
お似合いなエディは、更に切実に苦しかった記憶があります。

しかし『橋からの眺め』の業の深さは何もエディだけのものではありません。
登場人物の誰もが、大切な人を大切に、大切なものを大切に、しただけ
なのに、彼らを飲み込む運命は全員にとって取り返しのつかない悲劇です。
そしてその原動力となっているのは、必死に生きている男たちなのです。

『ガラスの動物園』も、繊細なイメージを持たれることの多い戯曲かも
しれませんが、やはり男性にとって魅力的な戯曲ではないかと思います。

作者テネシー・ウィリアムズの自伝的な物語とされているこの戯曲。
描かれているのは母アマンダ、娘ローラ、その弟トムの3人家族ですが、
劇の語り手でもある弟トムはテネシー・ウィリアムズそのものと
言われています。詩人になりたいという創作への欲求と相容れない、
母親との確執。そしてか弱き姉ローラへの愛。
劇のラストで全てを振り切って飛び出したトムが、流離の日々の果てに、
深い哀惜の念を込めて語り始める物語が、この『ガラスの動物園』
なのです。テネシー・ウィリアムズは劇中でこの劇を【追憶の劇】と
呼んでいます。ローラは20代前半、トムはその弟ですが、戯曲で描かれる
ラストよりずっと時を経た時間軸から過去を振り返っている、という設定である
ため、ローラよりずっと年上の俳優をキャスティングすることも多い戯曲です。

『ガラスの動物園』には唯一家族でない人物がいます。
ローラのハイスクール時代の憧れの人で、現在ではトムの同僚である、
ジムという青年。一人として現実の世界に適応できる人間のいない
この一家を訪れる彼は、高校時代、文武両道に秀でたヒーローでした。
一見、日本の少女漫画にしか出てこないような絵に描いたような二枚目キャラ
ですが、果たしてそうでしょうか?
彼が高校時代に発揮した輝きは、時代の激変を前に、自らの人生の節目を
前に、今や風前の灯です。
彼もまた、「ガラスの動物園」の檻の中、脆く壊れやすい、ガラスの動物
なのだと思います。しかしそれに抗い、意欲的に人生を切り開こうとしている
ジムは、とても魅力的な人物だと思います。

『橋からの眺め』と『ガラスの動物園』という2本の名作戯曲に登場する、
この魅力的な男たちに挑戦する俳優からのお申し込みを、心よりお待ちしています!

詳細はこちらからどうぞ! → リンク


薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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# 2016夏 アメリカ名作戯曲ワークショップのお知らせ
この夏、

『橋からの眺め』
『ガラスの動物園』

をテキストに、ワークショップを開催します


_______________________________________


2016年の春、3本の戯曲をテキストに一連のワークショップを開催しました。→リンク

テキストとして使用したのは:
デヴィッド・ヘア作『スカイライト』
アウグスト・ストリンドベリ作『令嬢ジュリー』
パトリック・マーバー作『クローサー』
という3本の戯曲です。

当初は戯曲1本に1つのワークショップでしたが、
『令嬢ジュリー』『クローサー』は特に好評で追加開催をしたため
(『クローサー』の方はこれから、来週です)、延べ約70人の俳優及び
その他の演劇人が参加したことになります。

春の一連のワークショップのテーマは、募集の際に書いたブログにあるように、
「一見過剰と思われるような【翻訳劇の言葉】も、【これしかない言葉】として
発せられるほどに自分のものにできれば、より豊かな世界が見えてくるのではないか」
というものでした。

では、春のワークショップで【翻訳劇の言葉】と格闘することによって、
何が見えてきたのか。

浮かび上がってきたのは「とてつもなく大きな物語を生きる」ということです。
名作と呼ばれる戯曲には、そうでない戯曲にはない「物語の大きさ」が備わっています。
100年の時を、そして異なる言語という壁を、乗り越えて愛される戯曲たちには、
やはりそれだけの物語が宿っているのです。
春に取り上げた3本とも、人物たちは人として生きていて最も恐ろしいものと向き合い、
目の前にいる相手と戦って戦って戦い抜きます。

大きな物語は、容易に時代を超える大きな葛藤がその根底にあります。
それを説得力を持って相手に渡し、観る者に届けるために、
俳優たちはそれまで生きる中で培ってきたあらゆるものを総動員しなければなりません。

そのような演劇体験は、俳優としての力強い【芯】を培う機会になり得ると思います。
例えば、そこまでスケールの大きな物語に触れる機会が少ない、いわゆる【小劇場】と
呼ばれるフィールドで活動している俳優や、
例えば、ミュージカルの分野で活動していて、大きな物語の中で生きる機会はあっても
その物語世界の真ん中に立って全てを背負うという機会がなかなかない俳優たちに
とっては、特にそうかもしれません。

春のワークショップで得た経験を元に、このたび夏にもワークショップを開催する
ことにしました。

今回のテキストは、20世紀アメリカ演劇を代表すると言っても過言ではない、
アーサー・ミラー作『橋からの眺め』
テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』
の2本です。
いずれも、神話的とすら言える普遍的な人間の業を描き、世界中で繰り返し上演される
名作です。最近では『橋からの眺め』がナショナル・シアター・ライブで鮮烈な印象を
残しましたね。

しかしこの2本は共に、「大きな物語」として人間の普遍的な業を描くと同時に
【特定の時代と場所に特化した家族劇】という側面も持っています。

今回のワークショップでは、それぞれの時代と場所、そして作者がそれをどう見つめて
いるか__つまりは【世界観】を学ぶことで、2016年の東京にいながらにして、
作家が戯曲に託した「その時代、その場所ならではの生々しい苦悩」を【我が事】に
したい、と考えています。

具体的には、作家がその戯曲の世界観を最も端的に表しているのは【長台詞】と考え、
それに取り組む時間を設けようと、期間を5日間から6日間にしました。

【長台詞】には色々な考え方、分類の仕方がありますが、
1)人物がいわばナレーターとなって物語を俯瞰して語る場合
2)人物が場面の中で他の人物を相手に長い台詞を言う場合
のうち
『橋からの眺め』では主に1に、『ガラスの動物園』では1と2の両方に、
注目する予定です。

演劇の果たすべきことの一つに、
「普遍的な大きな物語と、わたしたちの毎日の暮らし、人生を、繋ぐこと」
があるとわたしは考えています。

作家が演劇に刻みたかった【その時代その場所の苦悩】を捉え、
そこから作家が生みだした【普遍的な人間の葛藤と業】に飛び込み、それを引き受ける。
この夏そんな体験をして、俳優として、演劇人としての基礎体力を、つけてみませんか。

_______________________________________


2016夏 薛 珠麗のアメリカ名作戯曲ワークショップ

戯曲紹介

7月:
『橋からの眺め』
アーサー・ミラー作、1956年ロンドン初演。ニューヨーク、ブルックリンの
イタリア系港湾労働者であるエディは、血の繋がらない姪のキャサリンを過保護に
育てている。そこへ、彼らを頼って、妻の従兄弟たちがイタリアから出稼ぎに
やってくる。うち1人と恋仲になるキャサリン。エディの愛は、育ての親としての
情を逸脱し始める。

8月:
『ガラスの動物園』
1944年シカゴ初演、作者テネシー・ウィリアムズの自伝的作品と言われる。
若い日の夢に浸り続ける母アマンダ、足が悪く内気な姉ローラ、そして詩人を
夢見つつも、家計を支えることに神経をすり減らす弟トム。危うい家族関係は、
1人の青年の来訪によって決定的に破綻する。

講師紹介

薛 珠麗(せつ しゅれい)

生まれも育ちも横浜市。国際基督教大学卒業の翌日、tptに参加。
海外演出家のアシスタント/演出補、戯曲翻訳、演出を手がけた後、
独立。演出作品にtpt『蜘蛛女のキス』、ギィ・フォワシィ・
シアター『ストレス解消センター行き/母からの手紙』、
音楽実験室 新世界『楽屋〜流れ去るものはやがてなつかしき』、
PLAY/GROUND Creation『ブルールーム』。翻訳作品に
tpt『エンジェルス・イン・アメリカ』『橋からの眺め』
『ブルールーム』、パルコ劇場『ハーパー・リーガン』、
帝国劇場『レディ・ベス』など多数。
『バーム・イン・ギリヤド』で第1回小田島雄志翻訳戯曲賞受賞。

ワークショップ詳細
_______________________________________

期間

『橋からの眺め』  7月 4日(月)〜 9日(土)
『ガラスの動物園』 8月15日(月)〜20日(土)

(これまでの5日間から1日増えて6日間になっているのでご注意ください)

時間

13:00〜20:00

場所

最寄駅が新宿から電車で10分以内の稽古場になります。

参加形態 及び 定員

いずれのワークショップも
【戯曲読解 及び ディスカッション】と
【実際に場面を演じてみる】が主な内容になります。
参加形態は2つあります。

【アクティング】参加:
6日間の期間中、毎日、実際に場面を演じる機会があります。
全日程NGなしの参加が条件になります。
(遅刻早退に関してはご相談ください)
定員:各ワークショップとも男女6名ずつ、計12名

【ディスカッション】参加:
実際に場面を演じる機会はありませんが、戯曲読解における
ディスカッションを牽引していただけたらと思います。
「全日程は参加できないけど‥‥」
「1日しか参加できないけど戯曲が読んでみたい」
という方など、こちらへどうぞ。
定員:各ワークショップとも12名前後

参加費

【アクティング】 18000円
【ディスカッション】9500円(NGのある方はご相談ください)


募集対象

【アクティング】参加:俳優
【ディスカッション】参加:俳優、スタッフ

お申し込み方法

以下をメールでお送りください。

1)ご希望のワークショップ 及び 参加形態
2)お名前(ふりがな)
3)年齢
4)顔のわかる写真
5)パソコンからのメールが受け取れるメールアドレス
6)お電話番号
7)NGや遅刻早退のご希望が、もしあれば

送り先:
shurei.official@gmail.com
ご質問、ご相談もこちらのアドレスへどうぞ。


お申し込み受付開始の日時

6月11日午前11時より受付を開始します。

定員より多くのお申し込みがあった場合

基本的には先着順とします。
「基本的には」というのはどういうことかというと、
今回は「男女」というカテゴライズにとどまらず、
募集する人数を役ごとに変えたい、と考えているからです。
その点ご了解ください。

_______________________________________


いずれのワークショップも、キャンセルはいつでもお受けしますので、
「予定はまだ決まらないけど興味はある」という場合は、
気軽にご応募いただけたら幸いです。

尚、春と夏のワークショップでテキストを使用した5本の戯曲を集め、
連続リーディング公演を企画中です。
そのためにも、熱い演劇の夏を多くの方と共に過ごせることを、
心より楽しみにしています。


お待ちしております!


薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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| comments(0) | - | 18:14 | category: WORKSHOPS |
# 薛 珠麗 今後の活動(ざっくり)
3月から始まった薛 珠麗3か月連続ワークショップ
『スカイライト』『令嬢ジュリー』『クローサー』、先日
無事に全ての日程を終えました。

『令嬢ジュリー』は特にご応募が多く、追加の開催をしたので、
3か月連続、4つのワークショップ。

まずはその総括のブログを書こう‥‥と思ったのですが、
勢いに乗って!今後の活動予定をざっくりと、発表してしまおうと
思います。

『クローサー』追加ワークショップ
_________________________________

今月は早速、『クローサー』ワークショップを追加開催します。
実はこちら、5月に開催したワークショップが定員に達したために
ご参加いただけなかった皆さんで、すでに定員に達しています。
新たな募集の予定はありません。

もし「『クローサー』やりたい!」という方がいらしたら、
メールをください。リクエストが多いようであれば三たびの開催を
企画します。

サマーワークショップ:『橋からの眺め』『ガラスの動物園』
__________________________________

次に、7月4日から9日には、ナショナルシアター・ライブでも
上映された、アーサー・ミラー作『橋からの眺め』のワークショップを
開催します。

8月にはテネシー・ウィリアムズ作『ガラスの動物園』のワークショップを
8月15日から20日に。

この2つ、いずれも募集はまだです。近々こちらのブログで詳細の発表をします。


そして、その後なのですが‥‥


リーディング公演
__________________________________

上記『スカイライト』『令嬢ジュリー』『スカイライト』『橋からの眺め』
『ガラスの動物園』は全てわたしの翻訳によるテキストです。

『橋からの眺め』は1999年にtpt(シアタープロジェクト・東京)で
ロバート・アラン・アッカーマン演出、堤真一さん主演で上演した際に
使用した翻訳の最新改訂版になりますし、『クローサー』は2005年に
tptでのワークショップ公演としてわたし自身が演出して上演した際の
翻訳の最新改訂版を使用していますが、それ以外は全て新訳です。

5本の戯曲を立て続けに翻訳し、のべ80人以上の俳優が
わたしのディレクションのもと取り組んだので‥‥せっかくですから、
5本の戯曲の、リーディング公演を行おうと思います。
時期、場所、詳細は追って発表します。

以上、詳細が発表できない状況ではありますが、「興味がある!」という方が
もしいらしたら、下記のメールアドレスにご連絡をいただければ、
詳細が決定次第、メールにてご案内をお送りします。

shurei.officialアットマークgmail.com


どうぞよろしくお願いいたします!


薛 珠麗 (せつ しゅれい Shurei Sit)


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