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薛 珠麗(せつ しゅれい)のブログ
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# 『RENT』愛、炸裂中。
今週末、わたしが不定期に行っている【英語で読むミュージカル】の第4弾として
『RENT』を取り上げるので、朝も夜も『RENT』漬け。

つまり、わたし的には【極楽】な時間である。

『RENT』は主要な役のほとんどにオリジナル・キャストを配した映画もあるし、
ブロードウェイのロングランの千秋楽をそのまま収録したDVDも売られている。
1996年に登場した際、まさに【彗星の如く】という鮮烈さで注目を集めた
作品でもあるし、もちろん日本でも翻訳上演も来日公演も何度となく行われている
から、わたしのように『RENT』が大好きな皆さんは、きっとたくさんの
形でこの作品と出逢ったのだろうなぁ、と想像する。

わたしの場合、まずブロードウェイのオリジナルキャスト・アルバムだった。
実は普段はブロードウェイなどの新作にそれほど関心があるわけでないわたしに、
ブロードウェイで早速観て来た友達が「いいから聴いて!とにかく聴いて!」と
自分用に買ったCDをわたしにポン、とくれたのだ。

最初の衝撃は「楽曲がかっこいい♪」と、「詩があまりに深い‥‥」のどちら
だったか、覚えていない。恐らくは両方だ。

楽曲のかっこよさは、とにかくロンドンもののミュージカルばかりを聴き慣れていた
わたしの耳には、ひたすら新鮮だった。当時入って来始めていたウィーンものの
ロック感とも全然違う、1970年代に多く作られたロック・ミュージカルとも
全然違う、【いま】を切り取ったような、清々しく駆け抜けるような、エッジ。

そして、歌詞だ。
『RENT』の歌詞は、【歌詞】なんてものじゃない!と表題曲『RENT』を
聴いて衝撃!すぐ後に続くロジャーの『One Song Glory』を聴いて衝撃!!
物語が進むごとにどんどん衝撃!!!という感じ。

【歌詞】でないなら何なのか。
【詩】である。
音楽と相乗してドラマや想いを伝えるものが【歌詞】であるならば、
『RENT』の言葉は音楽と分ち難く呼吸しながら、同時に、時代をつんざく
叫びのような鋭さとチカラを持っていた。
少ない言葉数でわたしの世界を丸ごと揺さぶるような、作品世界の匂いまで
伝えるような、大きさと体温を持っていた。
同じ時代を生きながら、わたしなどは想像もできない毎日を生きる誰かの想いを
生々しく想像させる、的確さと深みを、持っていた。

明日には仲間が死ぬかも知れない。次には自分が死ぬかも知れない。
そんな中でもがき、願い、絶望し、愛し、戦い、失い、みつけ。

この命の火が消える前に、一つでいい、一つでいいから、永遠に灯り続ける
何かを残したい___

これらが全て、夢見た成功を目の前にして突然この世を去った、無名の
ミュージカル作家が遺した、最期の言葉なのか‥‥!
当然ながら当時から話題の中心にあった、作者=ジョナサン・ラーソンの
『RENT』プレビュー初日当日の突然の死と相まって、言葉がとにかく
ガンガン刺さって刺さって、もう聴くだけで満身創痍、という感じだった。

舞台を観るまでもなく、CDを聴いただけで「一番好きなミュージカルの一つ」と
公言していたような気がする。

実際の舞台に触れることができたのは、ロンドン・ウェストエンドの
Shaftesbury Theatre だ。1998年6月26日。
開幕したばかりのロンドン公演には、何と男性の主要人物全員のオリジナル・
キャストが出演していた。
オリジナル・キャストを観るのはどんなミュージカルでも嬉しいものだが、
『RENT』の場合は格別な気がする。
ちなみに観られたのはロジャー役の Adam Pascal、マーク役の Anthony Rapp、
エンジェル役の Wilson Jermaine Heredia、そしてコリンズ役の Jesse L. Martin。

これがもう、凄かった。

ひっぱたかれるみたいな。鞭で打たれるみたいな。身体に感じる、衝撃。
【命の叫び】としか、言いようがない。

何百回聴き続けた大好きなOC盤が、わたしはこの後、何か月も聴けなくなった。
あれほど突き刺さって痛かったCDの歌が、平坦に、味気なく思えるのである。
それほどまでに、彼らの__主にオリジナル・キャスト、つまりジョナサン・
ラーソンを知る彼らの__歌は、叫びは。凄まじいものだった。

2幕などは、もう劇場全体が涙を貯める瓶のようになっていた。
隣で観ていた、英語がまるでわからない同僚も、涙の瓶と化していた。
‥‥いや、【泣けた】とかそういう安っぽい言葉で感動を表したくないのだが、
客席全体が眼球も溶け出しそうな勢いで泣いていたことに打ちのめされたの
だから、書かずにはいられない。

この時の舞台で、わたしは忘れられない光景に出逢った。

といっても特別な何かではなく。
【椅子に座るエンジェル、その斜め後ろに立つコリンズ】
という、何でもない光景。

わたしは自慢じゃないが(いや、自慢だ!)物凄く素敵なラブ・シーンをたくさん、
観てきた。わたしの大好きな演出家たちは同時にわたしの師匠でもあるが、いずれも
想いとぬくもりが通うラブ・シーン、情熱的でかつ美しい性の描写が、はっきり言って、
得意だ。彼らのおかげで、こと【色気】という面では江戸時代より大幅に後退している
日本の演劇界(特にミュージカル!)にあって、本当に素敵なラブ・シーンに、
スタッフとして観客として、立ち会わせてもらった自負がある。おかげでわたし自身の
演出修行においても【ラブ・シーン】は殊の外、重要な位置を占めてもいる。
「得意」とはさすがに言えないが、「ラブ・シーン、大好き!」とは公言している。

そんなわたしだが、この時の【椅子に座るエンジェル、その斜め後ろに立つコリンズ】
ほど、愛と慈しみと優しさと官能が2人の人間の間にあたたかく流れる様子を、瞬間を、
舞台上で観たことはない。

舞台の上に【愛】がそのまま、載っている。

それがわたしにとっての、『RENT』最大の感動だ。

舞台に【愛】がそのまま載っているから、そこには叫びも、夢も、ユーモアも、
闘いも、ぬくもりも、醜さも、微笑みも、残酷さも、悲しみも、喪失も、再生も、
希望もある。

【愛】だからといって、万事が優しくほのぼのしたものなわけなど勿論なく。
むしろ、その反対で。

『RENT』の言葉は、人間の愛が取り得るあらゆる形を、生きている。

今週末の【英語で読むミュージカル】第4回『RENT』編では、その一端でも
感じてもらえるように、読み解いていきたいと思っている。

皆さま、お待ちしております。
改めて、詳細はこちらに。


以下に、おまけ。

1998年6月、『RENT』を初めて観た時に書いたレポを、採録します。
15年前のわたしの『RENT』感想、例によってかなりの長文ですが、
興味のある方はどうか、読んでやってください。


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