___evidence*___薛珠麗's BLOG

薛 珠麗(せつ しゅれい)のブログ
<< August 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「文明開化」発「明治」経由「幕末」好き。 | main | 寄り道の海。 >>
# 若冲はんのいのち。
ブログの更新が滞ってます。自分の文章を紡ぎ出すよりも、インプットしたり
下地を整えたりの日々です。

ブルーレイレコーダを買ったので、嬉しさのあまり色々な番組を無闇に
録画して見ています。最近、NHK教育が面白くてたまりません♪

以前からたまに見ていた『新・日曜美術館』、先週は my フェイバリット絵師=
伊藤若冲でした。題して『夢の若冲・傑作10選』。

どれも見慣れた画で解説も多くはビギナー向けな感じでしたが、中には新鮮な
切り口の視点もあり、なかなか面白く見ることができました。

‥‥それどころか、何と2回も涙を流してしまいました。
わたしは涙もろい方ではありますが、アート教養番組で涙を流すとは。。
自分でもびっくり。

10選のうちの1幅、『貝甲図』。

太平洋の真ん中や深海でしか取れないはずの貝も含め、100種類以上の貝が
まるで図鑑のように正確に描かれたこの絵。
裕福とはいえ、海の近くに住んでいるわけでもない江戸中期の絵師が、普通に
考えたら手に入れられるはずもない貝が多く描かれています。

番組では、その謎を解く鍵として、木村蒹葭堂の貝のコレクションを紹介しました。
今も大阪の自然史博物館に保存されている、漆の重箱に入れられた美しく稀な貝たち。
当時の関西では知識と文化教養の中心であったこの文化人と、若冲は親交があったと
言います。太平洋の真ん中でしか取れないはずの貴重な貝も、そこで確認できるの
です。若冲が描いたのと、計ったように同じ形、同じ色の小さな貝殻。。

わたしは、涙が止まらなくなってしまいました。
小さくて大きな、ささやかで力強い、ありふれて神秘的な命たちを生涯、
描き続けた若冲はん。亡くなってから210年が経つこの絵師が描いたものたちは、
当然、もうこの世にはありません。若冲はんの描いた絵の中では、うるさいほど
鮮やかに、息づいてはいますが。
若冲はんがみつめ、描き、その命の痕跡のひとつひとつまでも愛でるように
写しとった対象が、今も、この世にあるなんて!
若冲はんがみつめたのと同じものを、現代のわたしたちも、見つめることができるなんて!

奇跡のように、思えたんです。
「若冲はんは、この世に確かに、生きていたんだ」
当たり前のことですが、そんなふうに思って、それも心から思って、もう涙が
止まりませんでした。

「250年くらい、早く生まれたかったなー。それも、京都に」と、半ば本気で
考えているわたしです。

番組が最後に紹介したのは『百犬図』でした。
当時の寿命を考えればほとんど「仙人」と思われていただろう、84歳という長い
人生を生きた、若冲はん。長寿な上、亡くなる直前まで精力的に絵を描き続けた
その長い人生で、最後に描いた絵とも言われています。



晩年の絵の中には、匠の極みとも言えるサイッコーに渋くてかっこいい絵もあるし
おちゃめでいたずらジジイな絵もあるのが、この伊藤若冲という絵師の魅力です。
その内この絵はおちゃめでユーモラスなほうの若冲はん、とわたしは、この絵と
直接対面した時も勝手に思い込んでいたように思います。

でも【「百」にも「子犬」にも「安産」「多産」の意味がある】という解説を
聞いていたら、それは違うんじゃないかと思い始めました。

男という性に生まれ、しかも、生涯妻を娶ることのなかった若冲はん。
命を愛し抜き、命にこだわり抜き、命に生涯向き合っていた若冲はんは、
命を生み出さない性に生まれ、かつ自分からは命を生み出さない生き方を
選んだのですね。

絵は、命を生み出さない彼の、命を生み出す手段だったのです。
そんな彼が自分の命の終わりに差しかかった時に描いた、
あふれ返る泉のような命。

命への祈りを、若冲はんはきっとこの絵に託したのです。

どうやら子供を持たない人生を歩むことになりそうな一人の人間としても、
本当に涙が止まりませんでした。さっき流れた涙も、まだ止まっていないのに。

わたしは、演劇でこういうことがしたいです。
「命と向き合い、命を継いでいく」
あらゆる表現とか芸術とか文化とかエンターテインメントとか人生とかの
これが、たった一つの、本当なのかなぁ、と思います。



薛珠麗(せつ しゅれい)
web拍手
| comments(0) | trackbacks(0) | 03:48 | category: |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://shurei-s.jugem.jp/trackback/61
トラックバック
Selected Entry
Profile
Comments
Mobile
qrcode
今宵の月は‥‥
Search this site
Sponsored Links