___evidence*___薛珠麗's BLOG

薛 珠麗(せつ しゅれい)のブログ
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# 映画『タイタニック』3D (拍手コメントお返事を追記)
タイタニック沈没から100年ということで、twitter実況を追いかけたりして
いたが、「せっかくだから、やっぱり」と、3Dになって復活した映画
『タイタニック』を見て来た。

Twitter の方でちまちまと感想をアップしていたが、「絶対に書こう」と思っていた
ことを書き忘れていたことが発覚したので、ブログの方に感想をまとめがてら
書き留めようと思う。

以下、twitter の呟きの再録に若干の編集/加筆を施したもの。

*****

15年前の公開当時も映画館で3回だか4回だか見た映画だが、懐かしくもあり、
新鮮でもあり、また自分自身の変化も感じたり。

一番「変化」を感じたのが、沈没が間近に迫る中、タイタニック号の設計士
トーマス・アンドリュースが普段と変わらない一等の大階段の景色を呆然と
見回す場面だった。

いつ起こるか知れない大地震の巣の上で、どういう影響を起こすか知れない
放射能を浴びながら、普段と同じ経済活動を続ける日本の姿に重なる。

15年前には決して、決して、持ち得なかった感想だ。

自分の変化を一番感じたのが、T型フォードで二人が愛し合う場面だ。
「Are you nervous?」と聞くジャック。処女だと思ってたのか、と
今回はふと、よぎった。確か以前には思わなかったことだ。
ローズが処女でないのは、婚約者キャルが朝食の席で問いつめる
「昨夜は来てくれると思ってたのに」でわかる。

愛し合う二人の様子に、昔は「ずいぶん男をリードするのがうまい17歳も
いたものだなぁ」と思って見ていただけだったが、いま見ると、その前後の
2人の無言のやりとりと微かな表情に、当時の上流の娘の運命と、それを
察して悟るジャックの心の機微が見えて、何ともせつなくなった。
彼はあそこで色んな成長をしたんだろうなぁ。。と思いをはせる。
「ローズがジャックに愛を教わった」という印象をずっと持っていたが、
逆もまた真なりであると、いま見るとよくわかる。

ジャックの対比となるキャルの人物造形に関しても、昔はただの悪役としか
思わなかったが、「真摯さ」「傲慢」「幼稚」「世慣れ」それぞれの対比と
揺れ動きが、実はかなり面白い人物なのだと感じた。

昔も今も、ローズがその後歩んだ長い人生の豊かさに、とにかく心が熱くなった。
ジャックと交した無邪気な約束を守って、海辺のジェットコースターにも、馬にも、
ローズはちゃんと乗ったのだ。もちろん、馬をちゃんと跨いで。ローズはどんな
女優になったのだろう、きっといい女優だったのだろう、と想像する。ケイト・
ウィンスレットのように、嘘のつけない女優。そして、どんな人と結婚し子供を
設けたのだろう。100歳にして陶芸を嗜み、真っ赤なペディキュアを完璧に
施すほどに、豊かな人生を生きた女性。

15年前よりもずっと「ジャックの生きる才能」に感動した。沈み行く船の船尾に
しがみつきながらあれだけ対策を考えつける人って凄いよなぁ、と呆れるほどだ。

そして沈没後、ひとりになったローズが救助される直前「生きる」と決めた瞬間の
燃え上がる緑の瞳に、何だか理屈抜きにぞくぞくするものを感じた。

そうか、この2人は互いの生命力に共鳴し合ったのか、と。

パニックのなか演奏を続ける楽団や、抱き合って死を待つ老夫婦、逃げ惑う廊下で
辞書を広げる移民一家に昔は一番胸を掴まれたが、今回は船長のあり得ないほど
呆然とした様子に胸が詰まった。「しっかりして!頼むよ!」とも思えない。
何というか。あの絶望ってもう。何ていうか。ううう。

今回一番響いた台詞は沈没の直前の設計士トーマス・アンドリューズの台詞だ。

「I'm sorry that I didn't build you a stronger ship, young Rose」

字幕だと「もっと頑丈な船を造っていれば」ってなってしまうのが残念だ。
もっとずっと衝動的な謝罪の言葉ではないか、と思うからだ。

「ああこんな若い娘の命を自分の船は奪ってしまうのか」という独り言が、
思いがけぬ、しかし心からの相手への謝罪の言葉となって漏れ出した‥‥そんな
感じの言葉のように、わたしには思える。

「I'm sorry」は色々と訳せる言葉で、日本語で云うところ「残念」「遺憾」などの
表明にも使うが、ここで彼が伝えているのは、「本当にごめん」の気持ちではないか
と思う。それでいて、半ば独り言のような。

懐中時計で時間を確認して、タイタニック号の一等喫煙室の置き時計の時間を直す
彼の心中、如何ばかりか。

ジャックの名台詞「To making each day count!」の字幕が「今を大切に!」に
なっていたのもわたしは残念だ。これを日本語にするのは実に至難の業だが、
これではどうにももったいない。

「1日1日を人生に響かせる、そんな生き方に乾杯!」くらいの意味が込められた
言葉のように思う。

「1日1日を人生に刻みつけろ」と。

15年前には「こんな人がこんなふうにして死んだというのに、それを知る人も
惜しむ人もいないなんて‥‥」と天涯孤独のジャックの身の上を想った。
それが一番強く大きな感想だった記憶がある。

しかし、ああして生き、愛し、そして死んだ恋人の記憶を独り占めにすることで、
ローズは生きるよすがとし、そして2人で生きたのだ。他の誰かと結婚して
時間的にはどんどん遠ざかっていっても、ローズはジャックと生きたのだ。
15年前にはわからなかったが、今ならわかる。

そうなのだ。老いたローズが大西洋上で85年前の記憶を再び生きるのと同じように
15年前に見た映画を再び見るというのは、観客にとっても、15年前の記憶を
再び生きる体験になるのである。

それを体感したのは、15年前には「生きて彼との約束を果たすためとはいえ、
ローズはよくジャックの亡骸から手を放せるな‥‥」としか思わなかった場面に
新しい発見をした時だった。

ここでのジャックの台詞。

「You’re going to get out of this...you’re going to go on and you’re going to
make babies and watch them grow and you’re going to die an old lady,
warm in your bed. Not here...Not this night. Do you understand me?」
「君は絶対に生きのびる‥‥君は生きる、生きて子供をたくさん生んで、
子供たちの成長を見届けて、おばあさんになって、あたたかなベッドで君は死ぬ。
ここで死んだりしない‥‥こんなふうには。いいね」

「You must do me this honor...promise me you will survive....that you will
never give up...no matter what happens...no matter how hopeless...
promise me now, and never let go of that promise.」
「僕のために約束して‥‥生きのびると約束して‥‥絶対に諦めないと‥‥
どんなことがあっても‥‥どんなに希望がないように見えても‥‥今ここで
約束して、そしてその約束を守り続けて」

この最後の「never let go」の言葉を、2人は互いに交し合う。

互いに、手を強く握り合いながら。

字幕には「諦めない」とだけあるが、この「never let go」には色々な意味がある。

直訳すると「決して手を放さない」。
「しがみついて放さない」とか、対象によって色々なニュアンスを持ちうる言葉だが
ここでは「【望み】【約束】を【決して放棄するな】」とジャックは言いたいのだろう。

しかし、その言葉を繰り返すローズの方では、きっと「あなたのこの手を、
絶対に放さない」という意味で口にしているんじゃないか、とふと
思った。

だって、それはとても自然なことだろうと思うのだ。

凍てつく深夜の海の上。
周りには船の残骸と、夥しい死体ばかりが浮かんでいて、助けが来るか
どうかも定かではない。

全てを捨ててこの人と、とまで思った愛しい人の手の、消えそうに微かな
ぬくもりだけが、ローズの世界の全てなのだから。

「I promise. I will never let go, Jack. I'll never let go」

果たして助けがやってくるが、時はすでに遅く、ジャックはローズの手を
握りしめたまま、氷の海で絶命していた。

ジャックの手を何度も何度も握って揺すって、ジャックの名前を何度も呼んで、
そしてローズは、その手を放す。
「I'll never let go」と何度も言いながら、その手を放す。

それまで
「この手を握りしめて、絶対に放さない」
と言っていたその同じ言葉が、ここから
「この約束を、希望を、命を。絶対に、守り続ける。生き続ける」
という誓いの言葉になる。この瞬間から、恐らくは85年間ずっと、
彼女のよすがとなる誓い。

愛し合ったその瞬間と同じ、委ねきった表情で氷の海へと沈みゆく
彼の顔を見送り、ローズは猛然と生き始めるのだ。猛然と。

15年前は「もう死んでいるからどうしようもないとは言え、よくあの手を
放せるよなぁ」と思って見ていたものだったが、そうじゃないのだ。

あの手を永遠に放さないでいるために、あの時ローズは、手を放すのだ。

15年前にはわからなかったことだ。

『タイタニック』に再会できたおかげで、15年前の自分と、15年後の
今の自分。両方と出逢うことができた気がしている。



薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)




追伸:
以下に、拍手にいただきましたコメントへのお返事を追記します。



芍薬さま


芍薬さん、素敵なコメントをありがとうございます m(_ _)m

「事故で恋人が死んでしまう物語」ではないんですよね。
「時間や生死がどんなに遠ざけても、共に生きた恋人たちの物語」なんですよね。

読んでくださって、応えてくださって、ありがとございました!
web拍手
| comments(2) | trackbacks(0) | 20:59 | category: |
コメント
ツイだけでも目からウロコ状態でしたが、また更に自分では気づけないだろう、深い&素敵な部分を知れてウロコほろほろです、ありがとうございます!

ローズの余裕と朝の会話も、な、なるほどー!と。
はい、気づきませんでした…それも含めるとまたキャスという人物が面白くなってきました(笑)
気になっていたアンドリューズさんも…彼の絶望と後悔と呆然とその言葉が重なると、シーンを思い出すだけで涙涙。
船長もそうでしたが、全ては戻せない事なのだという喪失感が、より胸に刺さりました。

そしてラストのシーン!
これ、納得して観ているつもりでしたけど、微妙なもどかしさが残ってんだなと気づきました。
珠麗さんの解明で、膝を打つ思いで、すごくクリアになったんです。
ものすごく素直に感動できたんです。
「I'll never let go」
ジャックの言葉がローズの実行力として発揮された瞬間。
おばあさんになって、あたたかなベッドで死ぬまで、ローズは全うする…うわあ、改めて鳥肌ものでした!

15年前と今の自分を出逢えた、って素敵です。
私事ですが実は15年前は周囲にこの作品が好きだと言えなかったんです。
「何だ、流行りとレオ様か」って感じで終わってしまって、そこからもっと深い部分を話し合えもしなかった。
それがこんな風に感動を違えず、更に自分では気づけない事にも気づかせて頂けて、大切な映画になりました。

あああ、だらだらと書いてしまい申し訳ありません!(汗)
とにかく珠麗さんの言葉で、更にそして新しく感動した御礼という事で、読み流していただければ嬉しいです。
ありがとうございました!
| sarah | 2012/04/27 10:33 AM |


sarah さま

sarahさん、コメントありがとうございます!何て嬉しいコメント!!!

今このタイミングで再び公開してくれたキャメロン監督に、感謝ですね (^^)
公開当時は凝りに凝った映像にもっと気持ちがいっていたと思うんです。
今回、それが落ち着いて、じっくりと向き合うことができましたね。
こうしてブログで感想を読んでいただけることにもご縁を感じます。

わたしも実は15年前、師匠(の1人)に「ジェームズ・キャメロンの
エゴが主役」「くだらない脚本」と言われて、しゅんとした記憶があります。
「そうなんだろうか」と思い続けましたが、次に会った時には、堂々と胸を
張って「こことこことここにほら、真実があるとわたしは思う!」と反論
できる気がしてきました。
まず「『タイタニック』って見たことあります?」とまず聞いてみよう(笑)

本当に素敵な感想を、ありがとうございます m(_ _)m
| 薛 珠麗 | 2012/04/28 11:24 AM |

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