___evidence*___薛珠麗's BLOG

薛 珠麗(せつ しゅれい)のブログ
<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 神奈川芸術劇場、開館前夜。 | main | 42丁目の奇跡 その1 >>
# ヴァーチャル若冲ツアーに出かけましょう(編集中)
お正月、上野の国立博物館に初詣でに出かけたら、何と最愛の絵師
伊藤若冲の屏風絵が!!!!!

近年、何故だか都内ではなかなか、若冲の墨絵は見る機会がないのです。
京都、相国寺境内の承天閣美術館では展覧会期間中なら障壁画が
常設で見られますが、関東で常設展示はありません。展覧会も、
一番近くて千葉や宇都宮。一番たくさん見られたのは何と、滋賀県。

しかも、何とこの展示、「撮影可」というありがたさ。

ヨーロッパでも最近は「撮影可」が減りつつあると言うのに。。
日本ではなかなかないことです。ありがとうトーハク‥‥!!!

というわけで翌日、デジカメ片手に再び出かけたのでした。

その時の写真を元に、ヴァーチャル若冲ツアー、開催しようと思います。

とかく、緻密に濃密に描き込まれた彩色画が注目されがちな若冲。

わたしだって『動植綵絵』が大好きで大好きで、2009年の
『皇室の名宝』展の際の一斉展示の時は、確か6回ほど見に行ってしまった
のでした。
それ以前に、2007年に全30幅が120年ぶりに京都・相国寺へ
里帰りした際にも駆けつけて、雨の中数十分も並んで見たものです。
2日間にわたって。

それでも、あえて言いたい!

若冲の墨絵は、あの「超絶技巧」と称される彩色画にも、全く、一歩も、
引けを取らない!彩色画とはガラリと違うアプローチで、でも
やっぱりこの上なく若冲らしい世界が、そこには展開されているのです。
墨絵を見ないうちは、若冲を半分しか知らないことになる‥‥とさえ
断言していいと、わたしは思う!

先ほども書いたように、都内ではここ数年、なかなか見る機会が
なかった若冲の墨絵。この日撮影することのできた写真を使って、
見る機会のなかなかない友人たちとまるで一緒に絵を見て楽しむような、
そんな試みをしてみたいと思いました。
わたしは美術の専門知識は皆無だし技術的なことなんて一つもわかりませんが
アートと出逢う時いつもしているように、物語やメッセージを読み取り、
作者と語らう。。そんな気持ちで、若冲さんのこの墨絵とも、向き合ってみます。

若冲の墨絵の真髄が伝わるかどうかはわからないけれど、大好きでたまらない
若冲のユーモアと達観の面白さ痛快さを、一緒に感じてもらえたら。。


(画像はクリックで拡大します)

まずは、何故かカメラに収めてしまったロダンの『地獄の門』。
(これは静岡にあるものの方がずっと見応えがあるけれど)
この彫刻の阿鼻叫喚の狂気が、すっごく好きです。
駅から歩く途中にあります。大好きだから、ちょっと寄り道。



ちなみに、夜になるとこんな景色になります。
(この姿は室内で展示している静岡では見られない!)



そしてこちらが国立博物館の、外観。

ここの左奥の棟である「平成館」でわたしは若冲と出逢いました。
2006年夏、若冲を世に広く知らしめ、スーパースターへと押上げた
『若冲と江戸絵画』展は国立博物館平成館で行われたのです。
以後、『動植綵絵』全点展示の『皇室の名宝』展なども平成館で。
ちなみに、興福寺の「阿修羅」に逢えたのも平成館でした。
大切な思い出たくさんの美術館。
しかしこの日若冲さんがいたのは、珍しく中央の本館です。
(先日、映画『GANTZ』の中のアクションシーンの中でこの建物が
がっしゃんがっしゃん壊されているのを見た時は心が痛みました。。)




2階の一室の片隅に、若冲さんは静かに飾られていました。
ちなみに隣には尾形光琳の『風神雷神』が。





若冲の絵を見る時はとにかく混雑してぎゅうぎゅう、というイメージが
ありますが、あまり知られていない展示だったのと、隣の『風神雷神』が
目立っていたこともあり、時おり人の流れが途切れることもある中で
じっくりと向き合うことができました。

こちらは、説明書き。
題名は『松梅群鶏図屏風』です。小林忠執筆の『伊藤若冲』
(新潮日本美術文庫)によれば、1990年代半ば、つまり比較的
最近になって発見されたものとか。



残念ながら、いつ描かれた作品かが書いてありません。

年代のヒントとなるのは、点描の画法で描かれた灯籠でしょうか。
同じ手法で同じく灯籠が描かれた有名な『石灯籠図屏風』も
年代がはっきりと特定されていない作品ですが、佐藤康宏著
『もっと知りたい伊藤若冲』(東京美術)などによれば1789年から
最晩年にかけて、とのことですから、やはりこの作品もその頃
でしょうか。ただし、最晩年の墨絵の伸びやかさに比べると、
残念ながらこの絵は少し精彩を欠く気がします。大火事で焼け出され
大病をした1788年から1789年にかけて若冲は『仙人掌
群鶏図』などの大作も手掛けてはいますが、わたしの個人的な
感覚で言うと、どうも伸びやかさに欠けるのです。「のびのびして
いないなぁ」と思った絵はこの時期の作品であることが多いのです。
西福寺の『仙人掌群鶏図』は若冲では数少ない重要文化財ですが、
若冲得意であるはずのにわとりたちが、他の絵と比べるとどうにも
「剥製」のようだとすら思います。
(しかしそれ以後、1790年代には再びどんどん自由で弾むような
絵を描いていますから、当時の平均寿命を考えれば、まるで
仙人のような驚異的な体力です!)
ですから、わたしは素人ながら、この絵は1788年か翌年辺りに
描かれたものなんじゃないか、と勝手に推測しています。

六曲一双の屏風(6つに折れた屏風が2つで対になっていること)のうち
まずは右隻。



タイトルは「松」と「梅」とありますが、右隻の一番右の右上に描かれている
のは松にしてはずいぶんとエキゾチックな枝と、右下の茂みらしきもの。



若冲の松というとはっきりとしたパターンがあって、大きく分けると
松の枝に関してはうねうねと龍のうろこのように描き込んだものと
筆の跡をあえて活かしたもの、松葉に関しては一本一本開いて
花びらのように咲いているパターンと、やはり筆の跡を豪快に活かした
ものとがあるように思うのですが、この絵では右上は描き込まず筆跡を
活かした枝や松葉が描かれています。

謎なのは右下に描かれた茂み。花びら様の松葉にちょっと似ていますが、
まるで松葉の針の一本一本から生気が迸るような若冲の松葉の描き方とは
似ても似つかぬ、ちょっとどんよりというか、もっさりしています。
屏風の折り目を這い上がってくるようなこの茂み、松といわれれば松
だけど、ちょっと謎な絵です。。。

こちらは一番右の絵の左下に描かれたまん丸いにわとりさんたち。



ぽこぽこ、むくむくにまん丸くて雪だるまみたいなのに、よーく見ると
右の人は羽根の模様/質感を墨の使い方だけで描き分けていて凄い!
実に巧み。

よく見ると、早くもこの絵の特徴が。
墨絵なのに、少しだけ赤を入れているのです。トサカとくちばしの横の
口ひげみたいなところが、ポッとそこだけ赤いです。そして丸い(笑)
墨ひとつで彩色画のようにカラフルに描き分けられる若冲ですが、
墨絵に実際に別の色を使っている作品は唯一ではありませんが、珍しいです。

相変わらず、にわとりさんの目の「きょろん」とした表情が絶妙!
何とも可愛らしい、とぼけた味わい。
華麗な若冲さんも好きだけど、この憎めない感じが本当に好きです。

右のにわとりさんが「ぽ?」と見上げる先は



灯籠の上に、片足で立つ、おんどりさん。んなアホな。。
若冲さんお得意の、尾羽がSの字を描いてポーズをとるおんどりさん
なのですが、灯籠のずんぐりとした牧歌的なざらざら感と相まって、何だか
ちょっとだけダサくて可愛い。



Sの字尾羽にもいつものキレがありません。
しかし、細かい毛羽を描いた筆使いの空気のような軽やかさ、
同じ弧を描く丸い線の繰り返しでまとめたリズム感、にわとりの表情の
ぴたっとした集中。。その辺りはやっぱり流石。

少しだけタッチに点描のニュアンスも入れて、灯籠とバランスを取っている
ようにも思えて。この辺りのセンスのよさも、流石です。

灯籠の上のにわとりさんの目線の先には、このお二人。



灯籠の上でバランスを取る仲間を見て、「!」と仰天顔のおんどりさん。

グエッ!


おんどりさんの驚きっぷりに「?」と驚いている、めんどりさん。
コケ?


これです、このやりとりが若冲の面白さ。表情がとっても人間的で、
それでいて、動物の間(ま)の面白さも的確に捉えていて。

右隻の主役とも言えるおんどりさんは、それこそ『動植綵絵』でも
見られるような、身体をねじり上げて見得を切るポーズを取っているの
ですが、この絵においてはどうも。。ゆるーいです。



胸の辺りのモリモリや手羽の流れの美しさなどは流石なのですが、
首の毛羽や尾羽のSの字に若干、硬さが見られます。目の表情も、若冲
お得意の「瞬間を切り取ったっ!」というシャープな切れが感じられず。

しかし、動物特有の、一瞬の緊張に身体を強ばらせてピタッと
止まるあの感じ、本当によく切り取られています。このユーモアを
醸し出せるのは若冲さんだけだとわたしは思っています。

そして、めんどりさんが毎度の通り



実に可愛らしい!目の表情も、こちらは愛らしい。
「お尻をこっちに向けて(しかもしっぽを上げて!)ちょっとびっくり顔の
めんどり」を若冲さんはたくさん描いています。
何を伝えようとしているのかなぁ。可愛いなぁ。

その隣は、右隻の一番左の絵になります。



この屏風、中央から描いていった、ってことないんでしょうか?
どうも、端にいくに従って調子が出てきている気が。。特に左。

こちらのカップルなんて。。



センターにいるカップルより、ずいぶん筆が乗っている気がするのです。

見得を切ってるおんどりさんを見上げて地味に「クェ?」って
驚いてる小さなめんどりさんも、その隣で何故か真っ正面顔で「きょろん」
としてるおんどりさんも。。足や羽根のタッチの尖端まで、何だか
顔と同じ表情と呼吸で描けているっていうか。。

にわとりの身体と間(ま)が完全に一致している、っていうか。

すると、墨一色が何故かグンとカラフルに見えるから不思議。
(実際に赤も少し混ぜ込んでいるっぽいけど、でもほんの僅かですよね)

それにしても若冲のめんどりってちょっとヒガミっぽいというか
ちょっとだけブラックな空気を出しているところがキュート(笑)
ブラックにわとり。どんなやねん。

そしてこちらが、右隻の左端。



何て可愛いんだー!

「ホ?」って表情が三人三様!同じリアクションをしているキャラの
違う3人の一瞬を捉えていて、そして3人がそれぞれ実にとぼけたいい味を
出していて、もう最高に可愛い。そして最高に若冲。
余白が多いながらも、少しの描き込みで生き生きと描けてる!
尾羽も、断然、右にいる人たちよりも生きてます。

‥‥でも。。白を入れてみたのはやっぱり蛇足だった気がします。
あはは、言っちゃった。。

右隻最後は、右端の松の枝と地面の間の空間の中に捺された落款印。
若冲にかかれば、落款印も絵の大切な要素です。



いつも通り。。曲がってます。明らかに曲がってます。
あんなに精緻な絵が描けるのに。。どうして落款印はほぼ必ず、
曲がってるんでしょう。‥‥若冲さん、わざと?ねぇわざと???

2010年に千葉と静岡で開催された『伊藤若冲アナザーワールド』図録に
よれば、上が「藤女鈞印」白文長方印で、下が「若冲居士」朱文円印。
この2つの組み合わせは、1790年代、つまり最晩年の作品に多いようです。

ふむ。

さて、左隻です。



若冲作品のうち「群鶏図」と題された絵って、一体どれくらいあるんだろう。。
山のように見てきましたが、このように一つの背景が一つの屏風全体の中で
連続して存在するのって、実は珍しいです。屏風の一面一面の絵が別々の
空間である(でも連続していたりする‥‥!)ことが多いので、ましてや
背景があるのも珍しければ、それが連続しているのは本当に珍しいです。
風景画を描かない若冲ならではだと思いますが、そういう意味では、珍しく
連続性のある風景らしき構図になっている『石灯籠図屏風』とは点描の
手法も共通しているし、やはり同じ時期と考えた方が妥当、ということでしょう。

右隻でも空間の連続性はありましたが



こちらではちょっと脈絡がありませんし、構図のバランスもあまり取れているとは
言えない感じ。

こうして考えると

左隻の方が、空間的つじつまや構図のバランスが取れている気がします。

また、遠目に見ると、おんどりさんたちのSの字尾羽のリズム感が気持ちいい。

「寄って見るとにわとりたちの個性がいきいきとぶつかり合ってロック!な感じ
なのに、遠目に見るとSの字尾羽が見事に繰り返されていて、物凄く音楽的。。」
っていう傑作も、2010年千葉で見た『伊藤若冲アナザーワールド』では
見ることができて、狂喜乱舞したものでした!

残念ながらこの作品はそこまでの傑作ではない。。というのがわたしの意見です。
Sの字尾羽の連続性も、統一されてリズムを打ち出せているんだけど、それが
ちょっと平板な印象に陥っている気がします。ダイナミックさに欠けるというか。。

しかし‥‥!

見よ、左隻のにわとりさんたちの、この絶好調!な若冲っぷり♪

こちら、左隻の一番右にいるおんどりさん。



丸い線がふっくりと伸びやか。背景の薄墨を塗り残した白い羽根の描き方が
効果的だし、真っ黒の尾羽の伸びやかさとポーズの集中感が若冲らしい!
何より、表情の「きょろん」が絶妙!顔の表情の全てが丸くて可愛らしいのに
若冲特有の「ツッコミ目線」がひしひし感じられて。。面白い!!!

このにわとりさんの「グェッ‥‥?」の先にいるのは、真っ白いおんどりさん。

右の人、見てもいないんかーい!

でも、この人も(小さく)「グェッ‥‥?」ってなってるところなので、これまさに
「グェッ‥‥?」のリレー。

若冲だ。。

真っ白おんどりさんは、余白を残すことと薄墨でさーっと描き出されています。
羽根の流れも質感を巧く捉えているのでしょうが、わたしはどちらかというと
首の辺りや手羽の簡略化された線の巧みさ可愛らしさに惹かれます。
少しだけ赤を滲ませた顔回りの無駄のない形も、小気味いい感じ。

左隻の右端の絵の中の「グェッ‥‥?」のリレーの先にあるのは、左隻の真ん中に
位置する、この絵。



ポーズだけ見たら、それこそ『動植綵絵』の中でも見られるような緊迫感みなぎる
ポーズのはずなのですが。。。何だ、このユルさはっ!(笑)

真ん中の絵の、右にいるひとたち。



何でしょうこの可愛らしさはっ!

立ってる方のひとなんて、おなかが水玉模様です。ポルカドットです。
もしゃもしゃ描かれた細かい毛羽が、相手に対して自分を大きく見せようと
しているように見えて、何とも言えないおかしみが。おもちみたいな
真っ白な首に、まん丸い目とまん丸い口元。全てがぽわんぽわんしていて
可愛いったらっ!!!胸の真ん中辺りに描かれた爪みたいなもの。。これは
何だろう???何であるにしろ、とにかくポップな感じで描かれています。
それでいて、Sの字尾羽や背中から流れる白は本当に流麗!はぁ〜見事だ。

アップにしちゃおう。


もっとアップにしちゃおう。


隣のめんどりさんも秀逸!



白を縁取る描線が圧倒的なリズム感です。鳥が羽根を逆立ててボワっと
丸くなる時って、信じられないほど規則性があって、見事に均一に丸い
じゃないですか?若冲さんの筆は、その境地まで行っている気がします。

そして、このめんどりさんを構成する線がどれも全て見事に同じテンション。。
本当に、凄い。(そして、可愛い)

シンプルだけど表情が的確な顔の描き方も気持ちがいいし、尾っぽを
おんどりと同じタッチで描いている辺りには、あたたかみも感じられます。

わたし、このめんどりさんの足が好きです。トトロみたい!!!(笑)

水玉おんどりと白くて丸い菊みたいなめんどりのカップルと対峙するのは



こちらのお二人。

筋肉が非常に緊張しているはずのポーズなのに何故だか何ともユーモラスな
感じになっているのは、こちらのおんどりさん。


このユルさはどこから来るのでしょう。。
デッサンがちょっとテキトーだからでしょうか。。

首の毛羽のラインがデザイン的というか、漫画っぽいニュアンスがあって
リキみをうまく逃がしているんでしょうか。

ただ、質感の描写の巧みさや顔の表情の一瞬の緊張は、もう本当に若冲らしい
的確な濃密さを感じるのです。感じるには感じるのです。なのに、ユルい。。。

何だか左隻中央のこの睨み合い、どちらも弱そうに見えるのがポイントなのかしら。

左のひとのお連れさんもナカナカです。


出た!たまごひよこ!!!

このめんどりさんはまたもやぷりっとしたお尻をこちらに見せているわけですが
ひよこさんたちも「たまご」としか言いようのない形をして、ユーモラスな姿を
ふりまいています。
めんどりさんは、羽根の模様も、お尻のラインも、胸のシルエットも、
見事なまでの「ぽわん」とした丸み。
それを取り囲むようにして描かれたひよこさんたち、まさに「丸描いてちょん」
状態!!!この思いっきりのいい描き飛ばしが痛快です。
「丸描いてちょん」でも、その線にちゃーんと、表情があって。。

穏やかです。

彼らの頭上には

梅の枝。

節くれ立った枝に、まぁるく膨らんで弾けるようにして開く、梅の花。
無駄がなく切れのいい花からは、ほのぼのとしたユーモアの香りがします。
梅にさりげなく施された黄色い彩色が、何気ないけどポイントになってます。

(続きます)
web拍手
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:59 | category: |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://shurei-s.jugem.jp/trackback/107
トラックバック
Profile
Comments
Mobile
qrcode
今宵の月は‥‥
Search this site
Sponsored Links