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薛 珠麗(せつ しゅれい)のブログ
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# 薛 珠麗ワークショップ新名称 & 情報発信ブログ開設のお知らせ
こちらのブログを情報発信源に、今年は3月から9月までの半年ほどの間に、
5つの戯曲をテキストとした8回のワークショップを開催してきました。

2つ、お知らせがあります。

このたび、単に「薛 珠麗主催によるワークショップ」だった
わたしのワークショップに、新しく名前をつけました。

新しい名称は【ESCAPADE Workshops】といいます。

【escapade】というのは
「向こう見ずな冒険、常軌を逸脱した行動」というような意味の、
わくわくと危うさが匂う英単語です。

【エスカペイド】と読みます。

ESCAPADE Workshop の名前で開催する第1回として、今までとは
かなり毛色の違うワークショップを企画しました。

ESCAPADE Workshops 情報発信専用のブログを開設しましたので、
よろしければそちらをご覧ください。
ECAPADE Workshops News

ツイッターアカウントも開設しました。よろしければ。
薛 珠麗 official ツイッターアカウント

ESCAPADE Workshops はリーディング、発表/公演へと
発展させるべく鋭意悪巧み中です。

これからも何卒、よろしくお願いいたします。


薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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# 2016年10月13日、ミシェル・オバマの演説より。(追記あり)


何と力強い言葉だろう。
信念に裏づけられた言葉の、力強さ故の、美しさ。


2016年10月13日、ニューハンプシャー州マンチェスターにおける
アメリカ合衆国ファーストレディ=ミシェル・オバマによる、民主党の
大統領候補=ヒラリー・クリントンへの、応援演説。



ネット上に訳した人は他にもいらっしゃるが、
わたしの耳に聞こえてくる日本語をどうしても文字にしておきたくて、
訳してみた。

2016年10月27日追記:改めて、こちらに全文の和訳を掲載しました。
こちらに掲載した分の倍の長さがありますので、よろしければ。


原文はこちら、BBCのサイトより


__________________________________

So I'm going to get a little serious here, because I think we can all agree that this has been a rough week in an already rough election. This week has been particularly interesting for me personally because it has been a week of profound contrast.

というわけでここで私は皆さんに、少々真剣に、語りかけたいと思います。
ただでも苦しい今回の大統領選挙で、今週1週間は特に苦しかったと、
皆さんにも同意していただけるんじゃないでしょうか。
私にとっては特に印象的な1週間になりました。
何故なら、あまりに対照的だったからです。


See, on Tuesday, at the White House, we celebrated the International Day of the Girl and Let Girls Learn. And it was a wonderful celebration. It was the last event that I'm going to be doing as First Lady for Let Girls Learn. And I had the pleasure of spending hours talking to some of the most amazing young women you will ever meet, young girls here in the US and all around the world.

ホワイトハウスで International Day of the Girl (国際ガールズ・デイ)と
「Let Girls Learn (女子に学ぶ機会を)」を祝ったのが、火曜日でした。
素晴らしい集まりでした。私がファーストレディとして「Let Girls Learn」の
ために開催する最後のイベントでもありました。そこで私は、何人もの、
2人といないような素晴らしい少女たちと何時間も語り合うことが
できました。ここアメリカだけでなく、世界中からやってきた少女たちです。


And we talked about their hopes and their dreams. We talked about their aspirations. See, because many of these girls have faced unthinkable obstacles just to attend school, jeopardizing their personal safety, their freedom, risking the rejection of their families and communities.

少女たちの将来、夢について語り合いました。希望について語り合いました。
少女たちの多くは、学校に通う、それだけのために、私たちには考えられない
ような障害を乗り越えなくてはなりません。
学校に通うだけで、毎日の安全な生活や自由が、脅かされるのです。
家族や社会から、排除されるのです。


So I thought it would be important to remind these young women how valuable and precious they are. I wanted them to understand that the measure of any society is how it treats its women and girls. And I told them that they deserve to be treated with dignity and respect, and I told them that they should disregard anyone who demeans or devalues them, and that they should make their voices heard in the world.

そんな少女たちに、私は伝えなくてはならないと思いました。
一人一人が掛け替えのない、大切な存在だと。
いかなる社会も、女性や少女をどのように扱うかでその真価が決まるのだと。
一人一人に、大切にされ尊重される権利がある、
だからもし、あなたを軽視し、品性を侮辱する者がいたなら、
いかなる相手であっても耳を貸すに値しないと。
そしてあなたたちの声を、世間に、世界に、届けなくてはならないと。


And I walked away feeling so inspired, just like I'm inspired by all the young people here and I was so uplifted by these girls. That was Tuesday.

それは大いに触発される、豊かな時間でした。
ここにいる若い皆さんに今こうして触発されているように、
私はその少女たちから、勇気をもらいました。
それが火曜日のことです。


And now, here I am, out on the campaign trail in an election where we have consistently been hearing hurtful, hateful language about women - language that has been painful for so many of us, not just as women, but as parents trying to protect our children and raise them to be caring, respectful adults, and as citizens who think that our nation's leaders should meet basic standards of human decency.

そして今日私は、大統領選挙のキャンペーンのために、
こうして皆さんに語りかけています。
今回の大統領戦で私たちは、女性に対する憎むべき発言の数々を
ひっきりなしに聞かされてきました――私たち女性にとって、
耳にしただけで傷つく言葉ばかりです――女性ばかりではありません、
子供たちを人への思いやりと配慮にあふれた人間に育てたい親として、
国家の指導者はせめて、人間としての基本的な品性を持っていてほしいと
考える一市民として、聞くに耐えない言葉ばかりです。


The fact is that in this election, we have a candidate for president of the United States who, over the course of his lifetime and the course of this campaign, has said things about women that are so shocking, so demeaning that I simply will not repeat anything here today. And last week, we saw this candidate actually bragging about sexually assaulting women. And I can't believe that I'm saying that a candidate for president of the United States has bragged about sexually assaulting women.

今回の選挙で私たちは、
女性を貶め続けてきた人物をアメリカ合衆国大統領の候補者として
迎えてしまいました。
選挙戦を通し、いや人生を通してされてきた発言の数々は
あまりにおぞましく、ここで口に出すことすら憚られます。
そして先週、私たちはこの候補者が、
女性への性的暴行を自慢する発言を耳にしました。
自分で口にしながら、信じられない言葉です。
女性に対する性的な暴行行為を自慢する人物が、
アメリカ合衆国大統領の候補者である。


And I have to tell you that I can't stop thinking about this. It has shaken me to my core in a way that I couldn't have predicted. So while I'd love nothing more than to pretend like this isn't happening, and to come out here and do my normal campaign speech, it would be dishonest and disingenuous to me to just move on to the next thing like this was all just a bad dream.

このことがどうしても、頭を離れません。
想像を遥かに超えて、私という人間の一番芯の部分まで
脅かされている気がしています。
こんなことは起きていないというフリができたなら、
どんなにいいでしょう。
しかしもし私が、何事も起きていないという顔をして
通常通りの選挙応援演説をしたならば、
これは悪い夢だったのだと、全て忘れて次に進もうと説いたならば、
嘘をつくことになります。不正を行うことになります。


This is not something that we can ignore. It's not something we can just sweep under the rug as just another disturbing footnote in a sad election season. Because this was not just a "lewd conversation". This wasn't just locker-room banter. This was a powerful individual speaking freely and openly about sexually predatory behavior, and actually bragging about kissing and groping women, using language so obscene that many of us were worried about our children hearing it when we turn on the TV.

これは、無視していいことではありません。
残念な大統領選挙で数々起きたおぞましいエピソードの一つとして
片づけていいことではありません。
何故なら、これは単なる「わいせつな発言」ではないからです。
男性ロッカールームの軽口ではないからです。
権力を持つ人間が、権力を持ってさえいれば他者を性的な食い物にしていいと、
当たり前のことのように語ったのです。
女性にキスをし体に触ると、さも自慢げに語ったのです、
それも、子供たちにはとても聞かせられないような卑猥な言葉を使って。


And to make matters worse, it now seems very clear that this isn't an isolated incident. It's one of countless examples of how he has treated women his whole life. And I have to tell you that I listen to all of this and I feel it so personally, and I'm sure that many of you do too, particularly the women. The shameful comments about our bodies. The disrespect of our ambitions and intellect. The belief that you can do anything you want to a woman.

しかももっと悪いことに、これが1回きりの出来事ではないのは明らかです。
この候補者が人生を通して女性をこのように軽視してきたという、
これは、数えきれない例の一つでしかありません。
私は聞いていて、我が事のように感じます。
皆さんの多く、特に女性は、同じように感じているのではないかと思います。
女性の体への、恥ずべき発言。
私たちが持っている向上心や知性に対する侮辱。
女性には好きなことをしても許されるという考え。


It is cruel. It's frightening. And the truth is, it hurts. It hurts. It's like that sick, sinking feeling you get when you're walking down the street minding your own business and some guy yells out vulgar words about your body. Or when you see that guy at work that stands just a little too close, stares a little too long, and makes you feel uncomfortable in your own skin.

これは残酷です。
恐怖です。
そして実際、私たちは傷つけられています。
傷つけられているのです。
ただ道を歩いているだけなのに男性から体のことで
下品な言葉を投げつけられた時の、
あの悔しさ、
地面に引き摺り込まれるような、あの気持ちと同じです。
あるいは職場で、不自然に体を近づけられたり、
じろじろとした目線に晒された時の、
身の置き所がないような、あの気持ちと同じです。


It's that feeling of terror and violation that too many women have felt when someone has grabbed them, or forced himself on them and they've said no but he didn't listen - something that we know happens on college campuses and countless other places every single day. It reminds us of stories we heard from our mothers and grandmothers about how, back in their day, the boss could say and do whatever he pleased to the women in the office, and even though they worked so hard, jumped over every hurdle to prove themselves, it was never enough.

あまりに多くの女性が、
大学のキャンパスで、その他のあらゆる場所で、
どんなに拒絶しても聞き入れてもらえず、
乱暴な扱いをされたり辱められたりしています。
未だに日々、繰り返されているそういった行為と、
これは同じなのです。
私たちは思い出さずにいられません、
母やその母たちから聞かされてきた、
職場の上司たちがどんな言動をしても許された時代の話を。
私たちの母、その母たちが、どんなに必死に働き、
あらゆるハードルを越えて見せても、
決して正当な見返りが与えられなかった時代の話を。


We thought all of that was ancient history, didn't we? And so many have worked for so many years to end this kind of violence and abuse and disrespect, but here we are, in 2016, and we're hearing these exact same things every day on the campaign trail. We are drowning in it. And all of us are doing what women have always done: We're trying to keep our heads above water, just trying to get through it, trying to pretend like this doesn't really bother us maybe because we think that admitting how much it hurts makes us as women look weak.

そんなのはもう遥か昔のお話だと、誰もが思っていたはずです。
違いますか。
私たちの多くが、何年も何十年も、
このような暴力、不当、軽蔑を二度と受けなくて済むよう、
働き、尽くしてきました。
それなのに今、2016年になって、その頃と何一つ変わらない話を、
しかも大統領選挙で、毎日毎日聞かされているのです。
溺れてしまいそうなほど、聞かされているのです。
そして私たちは、これまで全ての女性がそうしてきたように、
顔を上げます。
溺れてしまわないように、向こう岸までどうにか泳ぎ切れるように。
私たちは一生懸命に「気にしません」という顔をします、
傷ついていると認めてしまったら弱みを見せることになるから。


Maybe we're afraid to be that vulnerable. Maybe we've grown accustomed to swallowing these emotions and staying quiet, because we've seen that people often won't take our word over his. Or maybe we don't want to believe that there are still people out there who think so little of us as women. Too many are treating this as just another day's headline, as if our outrage is overblown or unwarranted, as if this is normal, just politics as usual.

私たちは弱みを見せることを恐れているのかもしれません。
全ての感情を呑み込んで、何も言わないでいることに、
私たちは慣れてしまったのかもしれません。
それは、男性の言い分ばかりが通って、
私たちの言葉は聞き届けられないから。
或いは、女性を軽視する人々が未だにこんなにたくさんいることを、
私たちは信じたくないのかも知れません。
これは毎日更新されるニュースの一つでしかないと、考える人が多すぎます。
私たちの憤りは大げさだ、騒ぎすぎだと、考える人が多すぎます。
これくらい普通、よくある政治だと、考える人が多すぎます。


But, New Hampshire, be clear. This is not normal. This is not politics as usual. This is disgraceful. It is intolerable. And it doesn't matter what party you belong to - Democrat, Republican, independent - no woman deserves to be treated this way. None of us deserves this kind of abuse.

しかし、ニューハンプシャーの皆さん、いいですか。
これが普通なわけがありません。
よくある政治なわけがありません。
これは恥ずべきことです。許しがたいことです。
民主党、共和党、無所属――どの政党に属していようと、
いかなる女性もこのような扱いを受けていいわけがありません。
このような不当を受ける謂れは誰にもありません。


And I know it's a campaign, but this isn't about politics. It's about basic human decency. It's about right and wrong. And we simply cannot endure this, or expose our children to this any longer - not for another minute, and let alone for four years. Now is the time for all of us to stand up and say enough is enough. This has got to stop right now.

これは選挙戦なのかも知れませんが、断じて政治ではありません。
これは、人間としての基本的な品性の問題です。
何が正しく、何が間違っているかの問題です。
私たちはこれ以上耐えることも、
子供たちを危険にさらすこともできません――これ以上、1分たりとも。
4年間などもってのほかです。
立ち上がって「いい加減にしろ」と言う時が来たのです。
今ここで、終わらせなくてはならないのです。


Because consider this. If all of this is painful to us as grown women, what do you think this is doing to our children? What message are our little girls hearing about who they should look like, how they should act? What lessons are they learning about their value as professionals, as human beings, about their dreams and aspirations?

何故なら、考えてもみてください。
大人の女性でさえ傷つくのです、
子供たちに一体どれだけの影響があるでしょう。
幼い娘たちに、大人になったらそんな女性になってもいいと、
そんな言動をしてもいいと、
思わせてしまっていいのでしょうか?
そんなことで、
一人のプロフェッショナルとしての価値、
一人の人間としての価値、
一人一人が持つべき夢や向上心を、
教えることができるのでしょうか?


And how is this affecting men and boys in this country? Because I can tell you that the men in my life do not talk about women like this. And I know that my family is not unusual. And to dismiss this as everyday locker-room talk is an insult to decent men everywhere.

そして、我が国の男性や少年たちにも、
一体どれだけの影響があるか。
これだけは断言できます。
私の周りの男性に、女性のことをあのように言う人は
一人としていません。
そして私の家族は何も特別ではありません。
あの発言をロッカールームでの日常的な軽口と片づければ、
品性ある男性全てを侮辱することになります。


The men that you and I know don't treat women this way. They are loving fathers who are sickened by the thought of their daughters being exposed to this kind of vicious language about women. They are husbands and brothers and sons who don't tolerate women being treated and demeaned and disrespected. And like us, these men are worried about the impact this election is having on our boys who are looking for role models of what it means to be a man.

私や皆さんの周りの男性はあのように女性を軽視しません。
彼らは、あのような悪意ある言葉が娘に向けられることを良しとしない、
愛に溢れた父親です。
女性があのように扱われ、貶められ、軽蔑されることを許さない、
夫であり、兄弟であり、息子です。
そして彼らは、私たち女性と同じように、案じています。
男性としての規範を探している少年たちがこの選挙戦を見て、
どんな影響を受けるだろうかと。


In fact, someone recently told me a story about their six-year-old son who one day was watching the news- they were watching the news together. And the little boy, out of the blue, said: "I think Hillary Clinton will be president." And his mom said: "Well, why do you say that?" And this little six-year-old said: "Because the other guy called someone a piggy, and you cannot be president if you call someone a piggy.”

こんな話を聞きました。
6歳の男の子が家族でニュースを見ていて、突然言ったそうです。
「僕はヒラリー・クリントンが大統領になると思うよ」
お母さんは聞きました。
「そう、でもどうしてそう思うの?」
すると、6歳の男の子はこう答えたそうです。
「だって、あっちのほうは誰かのことを子豚って言ったでしょ。
人のこと子豚なんて呼ぶ人は大統領にはなれないよ」

So even a six-year-old knows better. A six-year-old knows that this is not how adults behave. This is not how decent human beings behave. And this is certainly not how someone who wants to be president of the United States behaves.

6歳の子供の方がまだ分かっているということです。
大人のすることではないと。
品性のある人間の言動ではないと。
アメリカ合衆国大統領になろうという人物の言動ではないのは
言うまでもありません。


Because let's be very clear. Strong men - men who are truly role models - don't need to put down women to make themselves feel powerful. People who are truly strong lift others up. People who are truly powerful bring others together. And that is what we need in our next president. We need someone who is a uniting force in this country. We need someone who will heal the wounds that divide us, someone who truly cares about us and our children, someone with strength and compassion to lead this country forward.

何故なら。
強い男性――本当の意味で規範となる男性は、
自分が強いフリをするために
女性を貶める必要はありません。
本当に強い人間は、周りの人々を高めるのです。
本当に力を持つ人間は、人と人とを結びつけるのです。
次期大統領に必要なのは、そういう人間です。
我々を一つにしてくれる人を、我々は必要としています。
この国を分裂させているあらゆる傷を癒す人。
我々そして子供たちの幸せを親身に案じる人。
この国を前進させるために必要な強さと思いやりを持つ人。


And let me tell you, I'm here today because I believe with all of my heart that Hillary Clinton will be that president.

そして私が今日ここに来ているのは、
心の全てで信じているからです。
ヒラリー・クリントンこそがその大統領であると。


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薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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# 『橋からの眺め』『ガラスの動物園』の男たち
おかげさまで、昨日より参加申し込みの受付を開始した
アメリカ名作戯曲ワークショップ(『橋からの眺め』『ガラスの動物園』)
たくさんのお申し込みをいただいています。

‥‥というより、『ガラスの動物園』の女性に限っていえば、
定員の3倍を超えるお申し込みがありました。
追加開催が出来ないかと、現在検討中です。

わたしは『橋からの眺め』は男性にとって非常に魅力的な戯曲だと考えています。
先日ナショナル・シアター・ライヴで上映されたイヴォ・ヴァン・ホーヴェ
演出版を見てそれを実感された方も多いのではないかと思います。

主人公エディは、家族を守るために港で荷揚げの仕事をする日々を
淡々と生きる、一見ごく単純な男ですが、自分の心に起きていることが
どうしても認められずに悶え苦しみます。彼は愛してはならない相手、
娘のように育てている姪のキャサリンを、愛してしまったのです。
その果てに、とうとう、彼の暮らす社会で最も憎まれる行動、決して
赦されない行動に、出てしまうのです。

エディが相談を持ちかける弁護士アルフィエーリは、全てを目の当たりに
しつつ、崩壊を食い止められなかったという、後悔に苛まれます。
そしてエディを襲った悲劇を、時代や場所を超越した眼差しで見つめ、
観客に語りかけます。

ニューヨークに住むエディ一家を頼ってイタリアからやってくる親戚の
ロドルフォは、エディの悲劇の発端となる人物です。
明るくて器用で賑やかでおしゃべりで夢見がちで、一見軽佻浮薄な青年に
見えますが、現実や人の心を真っ直ぐに見つめる誠実さと抜け目なさと、
そして夢を夢に終わらせない底力のようなものを持った、
男気のある人物だと思います。

ロドルフォの兄マルコは更に男気がある人物です。弟のように余計なことを
喋らず、国に残してきた病気の子供と働き者の妻のことを、
ひたすらにひたすらに、想っています。大切な人が脅かされた時には、
命さえも厭わない__彼の中に流れているのは、紛れもなくイタリアの、
それも、シチリアの血です。

わたしは何故だか業の深い戯曲に多く携わってきた気がしますが、
「一番業の深い戯曲はどれだったか」と人に訊ねられた時には、
決まって『橋からの眺め』と答えています。
17年も前になりますが、tpt(シアタープロジェクト・東京)が
わたしの師の一人であるロバート・アラン・アッカーマン演出で上演した
際、わたしは戯曲の翻訳と演出家の通訳兼助手を務めました。
エディ役の堤真一さんは当時、34歳でした。キャサリンの父親のような
年齢の俳優が演じるエディにも苦悩がありますが、キャサリンと色々な意味で
お似合いなエディは、更に切実に苦しかった記憶があります。

しかし『橋からの眺め』の業の深さは何もエディだけのものではありません。
登場人物の誰もが、大切な人を大切に、大切なものを大切に、しただけ
なのに、彼らを飲み込む運命は全員にとって取り返しのつかない悲劇です。
そしてその原動力となっているのは、必死に生きている男たちなのです。

『ガラスの動物園』も、繊細なイメージを持たれることの多い戯曲かも
しれませんが、やはり男性にとって魅力的な戯曲ではないかと思います。

作者テネシー・ウィリアムズの自伝的な物語とされているこの戯曲。
描かれているのは母アマンダ、娘ローラ、その弟トムの3人家族ですが、
劇の語り手でもある弟トムはテネシー・ウィリアムズそのものと
言われています。詩人になりたいという創作への欲求と相容れない、
母親との確執。そしてか弱き姉ローラへの愛。
劇のラストで全てを振り切って飛び出したトムが、流離の日々の果てに、
深い哀惜の念を込めて語り始める物語が、この『ガラスの動物園』
なのです。テネシー・ウィリアムズは劇中でこの劇を【追憶の劇】と
呼んでいます。ローラは20代前半、トムはその弟ですが、戯曲で描かれる
ラストよりずっと時を経た時間軸から過去を振り返っている、という設定である
ため、ローラよりずっと年上の俳優をキャスティングすることも多い戯曲です。

『ガラスの動物園』には唯一家族でない人物がいます。
ローラのハイスクール時代の憧れの人で、現在ではトムの同僚である、
ジムという青年。一人として現実の世界に適応できる人間のいない
この一家を訪れる彼は、高校時代、文武両道に秀でたヒーローでした。
一見、日本の少女漫画にしか出てこないような絵に描いたような二枚目キャラ
ですが、果たしてそうでしょうか?
彼が高校時代に発揮した輝きは、時代の激変を前に、自らの人生の節目を
前に、今や風前の灯です。
彼もまた、「ガラスの動物園」の檻の中、脆く壊れやすい、ガラスの動物
なのだと思います。しかしそれに抗い、意欲的に人生を切り開こうとしている
ジムは、とても魅力的な人物だと思います。

『橋からの眺め』と『ガラスの動物園』という2本の名作戯曲に登場する、
この魅力的な男たちに挑戦する俳優からのお申し込みを、心よりお待ちしています!

詳細はこちらからどうぞ! → リンク


薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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# 2016夏 アメリカ名作戯曲ワークショップのお知らせ
この夏、

『橋からの眺め』
『ガラスの動物園』

をテキストに、ワークショップを開催します


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2016年の春、3本の戯曲をテキストに一連のワークショップを開催しました。→リンク

テキストとして使用したのは:
デヴィッド・ヘア作『スカイライト』
アウグスト・ストリンドベリ作『令嬢ジュリー』
パトリック・マーバー作『クローサー』
という3本の戯曲です。

当初は戯曲1本に1つのワークショップでしたが、
『令嬢ジュリー』『クローサー』は特に好評で追加開催をしたため
(『クローサー』の方はこれから、来週です)、延べ約70人の俳優及び
その他の演劇人が参加したことになります。

春の一連のワークショップのテーマは、募集の際に書いたブログにあるように、
「一見過剰と思われるような【翻訳劇の言葉】も、【これしかない言葉】として
発せられるほどに自分のものにできれば、より豊かな世界が見えてくるのではないか」
というものでした。

では、春のワークショップで【翻訳劇の言葉】と格闘することによって、
何が見えてきたのか。

浮かび上がってきたのは「とてつもなく大きな物語を生きる」ということです。
名作と呼ばれる戯曲には、そうでない戯曲にはない「物語の大きさ」が備わっています。
100年の時を、そして異なる言語という壁を、乗り越えて愛される戯曲たちには、
やはりそれだけの物語が宿っているのです。
春に取り上げた3本とも、人物たちは人として生きていて最も恐ろしいものと向き合い、
目の前にいる相手と戦って戦って戦い抜きます。

大きな物語は、容易に時代を超える大きな葛藤がその根底にあります。
それを説得力を持って相手に渡し、観る者に届けるために、
俳優たちはそれまで生きる中で培ってきたあらゆるものを総動員しなければなりません。

そのような演劇体験は、俳優としての力強い【芯】を培う機会になり得ると思います。
例えば、そこまでスケールの大きな物語に触れる機会が少ない、いわゆる【小劇場】と
呼ばれるフィールドで活動している俳優や、
例えば、ミュージカルの分野で活動していて、大きな物語の中で生きる機会はあっても
その物語世界の真ん中に立って全てを背負うという機会がなかなかない俳優たちに
とっては、特にそうかもしれません。

春のワークショップで得た経験を元に、このたび夏にもワークショップを開催する
ことにしました。

今回のテキストは、20世紀アメリカ演劇を代表すると言っても過言ではない、
アーサー・ミラー作『橋からの眺め』
テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』
の2本です。
いずれも、神話的とすら言える普遍的な人間の業を描き、世界中で繰り返し上演される
名作です。最近では『橋からの眺め』がナショナル・シアター・ライブで鮮烈な印象を
残しましたね。

しかしこの2本は共に、「大きな物語」として人間の普遍的な業を描くと同時に
【特定の時代と場所に特化した家族劇】という側面も持っています。

今回のワークショップでは、それぞれの時代と場所、そして作者がそれをどう見つめて
いるか__つまりは【世界観】を学ぶことで、2016年の東京にいながらにして、
作家が戯曲に託した「その時代、その場所ならではの生々しい苦悩」を【我が事】に
したい、と考えています。

具体的には、作家がその戯曲の世界観を最も端的に表しているのは【長台詞】と考え、
それに取り組む時間を設けようと、期間を5日間から6日間にしました。

【長台詞】には色々な考え方、分類の仕方がありますが、
1)人物がいわばナレーターとなって物語を俯瞰して語る場合
2)人物が場面の中で他の人物を相手に長い台詞を言う場合
のうち
『橋からの眺め』では主に1に、『ガラスの動物園』では1と2の両方に、
注目する予定です。

演劇の果たすべきことの一つに、
「普遍的な大きな物語と、わたしたちの毎日の暮らし、人生を、繋ぐこと」
があるとわたしは考えています。

作家が演劇に刻みたかった【その時代その場所の苦悩】を捉え、
そこから作家が生みだした【普遍的な人間の葛藤と業】に飛び込み、それを引き受ける。
この夏そんな体験をして、俳優として、演劇人としての基礎体力を、つけてみませんか。

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2016夏 薛 珠麗のアメリカ名作戯曲ワークショップ

戯曲紹介

7月:
『橋からの眺め』
アーサー・ミラー作、1956年ロンドン初演。ニューヨーク、ブルックリンの
イタリア系港湾労働者であるエディは、血の繋がらない姪のキャサリンを過保護に
育てている。そこへ、彼らを頼って、妻の従兄弟たちがイタリアから出稼ぎに
やってくる。うち1人と恋仲になるキャサリン。エディの愛は、育ての親としての
情を逸脱し始める。

8月:
『ガラスの動物園』
1944年シカゴ初演、作者テネシー・ウィリアムズの自伝的作品と言われる。
若い日の夢に浸り続ける母アマンダ、足が悪く内気な姉ローラ、そして詩人を
夢見つつも、家計を支えることに神経をすり減らす弟トム。危うい家族関係は、
1人の青年の来訪によって決定的に破綻する。

講師紹介

薛 珠麗(せつ しゅれい)

生まれも育ちも横浜市。国際基督教大学卒業の翌日、tptに参加。
海外演出家のアシスタント/演出補、戯曲翻訳、演出を手がけた後、
独立。演出作品にtpt『蜘蛛女のキス』、ギィ・フォワシィ・
シアター『ストレス解消センター行き/母からの手紙』、
音楽実験室 新世界『楽屋〜流れ去るものはやがてなつかしき』、
PLAY/GROUND Creation『ブルールーム』。翻訳作品に
tpt『エンジェルス・イン・アメリカ』『橋からの眺め』
『ブルールーム』、パルコ劇場『ハーパー・リーガン』、
帝国劇場『レディ・ベス』など多数。
『バーム・イン・ギリヤド』で第1回小田島雄志翻訳戯曲賞受賞。

ワークショップ詳細
_______________________________________

期間

『橋からの眺め』  7月 4日(月)〜 9日(土)
『ガラスの動物園』 8月15日(月)〜20日(土)

(これまでの5日間から1日増えて6日間になっているのでご注意ください)

時間

13:00〜20:00

場所

最寄駅が新宿から電車で10分以内の稽古場になります。

参加形態 及び 定員

いずれのワークショップも
【戯曲読解 及び ディスカッション】と
【実際に場面を演じてみる】が主な内容になります。
参加形態は2つあります。

【アクティング】参加:
6日間の期間中、毎日、実際に場面を演じる機会があります。
全日程NGなしの参加が条件になります。
(遅刻早退に関してはご相談ください)
定員:各ワークショップとも男女6名ずつ、計12名

【ディスカッション】参加:
実際に場面を演じる機会はありませんが、戯曲読解における
ディスカッションを牽引していただけたらと思います。
「全日程は参加できないけど‥‥」
「1日しか参加できないけど戯曲が読んでみたい」
という方など、こちらへどうぞ。
定員:各ワークショップとも12名前後

参加費

【アクティング】 18000円
【ディスカッション】9500円(NGのある方はご相談ください)


募集対象

【アクティング】参加:俳優
【ディスカッション】参加:俳優、スタッフ

お申し込み方法

以下をメールでお送りください。

1)ご希望のワークショップ 及び 参加形態
2)お名前(ふりがな)
3)年齢
4)顔のわかる写真
5)パソコンからのメールが受け取れるメールアドレス
6)お電話番号
7)NGや遅刻早退のご希望が、もしあれば

送り先:
shurei.official@gmail.com
ご質問、ご相談もこちらのアドレスへどうぞ。


お申し込み受付開始の日時

6月11日午前11時より受付を開始します。

定員より多くのお申し込みがあった場合

基本的には先着順とします。
「基本的には」というのはどういうことかというと、
今回は「男女」というカテゴライズにとどまらず、
募集する人数を役ごとに変えたい、と考えているからです。
その点ご了解ください。

_______________________________________


いずれのワークショップも、キャンセルはいつでもお受けしますので、
「予定はまだ決まらないけど興味はある」という場合は、
気軽にご応募いただけたら幸いです。

尚、春と夏のワークショップでテキストを使用した5本の戯曲を集め、
連続リーディング公演を企画中です。
そのためにも、熱い演劇の夏を多くの方と共に過ごせることを、
心より楽しみにしています。


お待ちしております!


薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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| comments(0) | - | 18:14 | category: WORKSHOPS |
# 薛 珠麗 今後の活動(ざっくり)
3月から始まった薛 珠麗3か月連続ワークショップ
『スカイライト』『令嬢ジュリー』『クローサー』、先日
無事に全ての日程を終えました。

『令嬢ジュリー』は特にご応募が多く、追加の開催をしたので、
3か月連続、4つのワークショップ。

まずはその総括のブログを書こう‥‥と思ったのですが、
勢いに乗って!今後の活動予定をざっくりと、発表してしまおうと
思います。

『クローサー』追加ワークショップ
_________________________________

今月は早速、『クローサー』ワークショップを追加開催します。
実はこちら、5月に開催したワークショップが定員に達したために
ご参加いただけなかった皆さんで、すでに定員に達しています。
新たな募集の予定はありません。

もし「『クローサー』やりたい!」という方がいらしたら、
メールをください。リクエストが多いようであれば三たびの開催を
企画します。

サマーワークショップ:『橋からの眺め』『ガラスの動物園』
__________________________________

次に、7月4日から9日には、ナショナルシアター・ライブでも
上映された、アーサー・ミラー作『橋からの眺め』のワークショップを
開催します。

8月にはテネシー・ウィリアムズ作『ガラスの動物園』のワークショップを
8月15日から20日に。

この2つ、いずれも募集はまだです。近々こちらのブログで詳細の発表をします。


そして、その後なのですが‥‥


リーディング公演
__________________________________

上記『スカイライト』『令嬢ジュリー』『スカイライト』『橋からの眺め』
『ガラスの動物園』は全てわたしの翻訳によるテキストです。

『橋からの眺め』は1999年にtpt(シアタープロジェクト・東京)で
ロバート・アラン・アッカーマン演出、堤真一さん主演で上演した際に
使用した翻訳の最新改訂版になりますし、『クローサー』は2005年に
tptでのワークショップ公演としてわたし自身が演出して上演した際の
翻訳の最新改訂版を使用していますが、それ以外は全て新訳です。

5本の戯曲を立て続けに翻訳し、のべ80人以上の俳優が
わたしのディレクションのもと取り組んだので‥‥せっかくですから、
5本の戯曲の、リーディング公演を行おうと思います。
時期、場所、詳細は追って発表します。

以上、詳細が発表できない状況ではありますが、「興味がある!」という方が
もしいらしたら、下記のメールアドレスにご連絡をいただければ、
詳細が決定次第、メールにてご案内をお送りします。

shurei.officialアットマークgmail.com


どうぞよろしくお願いいたします!


薛 珠麗 (せつ しゅれい Shurei Sit)


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| comments(0) | - | 00:19 | category: WORKSHOPS |
# アメリカ大統領 広島訪問に思う。
わたしが芝居を始めたきっかけは、広島だった。
具体的には、修学旅行で訪れた原爆資料館での衝撃と、
そこで出会った一人の被爆者の女性の講演だ。
その時のことは、このブログの「芝居とのなれそめ」にも書いている。
http://shurei-s.jugem.jp/?eid=17

広島での体験をこのブログに書いた時には記さなかったが、
強く記憶に残ったのは、クラスメートや教師たちが広島への原爆投下に
対して持っていた、強烈な罪悪感だ。
わたしはインターナショナル・スクールに通っていたので、
クラスメートの大多数は白人だったし、引率の先生も白人。
一番多かったのはアメリカ人で、二番目がイギリス人、引率の先生も
日本人を妻に持つイギリス人だったけれど、戦争の時に生まれてもいない、
それどころか、クラスメートたちに至っては親の代までさかのぼっても
戦争の記憶などない彼らが、原爆投下に対して何故、罪悪感を持つのか。
わたしはとても不思議だった。そしてますます不思議なことに、
アメリカとイギリス以外の国籍のクラスメートたちも同じような罪悪感を
持っていたのだった。

わたしたちの代の前の年まで、広島への修学旅行には「原爆病院訪問」という
行程も組まれていたのだが、わたしたちの年から取りやめになった。
理由ははっきり覚えていないが「被爆者の高齢化」だったと思う。

引率の先生が、原爆病院を訪れることができなくなったわたしたちに
自分が訪れたの時の体験を話してくれたのだが、その時にこんなことを言った。

「生まれて初めて、白人であることを恥ずかしいと思った」

とっさに感じたのは「あんたたちは黄色人種のわたしたちや、アフリカ系の彼らと
違って、世界のどこに行っても差別はされないからね!」という漠然とした憤りだった。

が、時と共に、そしてその後に広島を実際に訪れてみて、発言の本質がそこではない
ことに、わたしは気がついた。

白人であることを恥じるほどに、
戦争の当事者でもないのにその行いをわが身の恥と感じるほどに、
【加害者】側から見た原爆は、恐ろしいものなのだ。

そしてまた、たとえ同じ戦況であったとしても、原子爆弾を自分たちと同じ
白人の住む国に投下することは決してなかった、と彼らは知っている。
親ですら戦争を知らない子供たちも皆、知っている。

人間に対して使ってはならない兵器であると、彼らが理解している証拠だ。

取り返しのつかない殺戮や残虐を、【加害者】はなかなか正視することができない。

しかし実際に広島を訪れて、15の民族の血が流れていたわたしたちのクラスは
全員、【加害者】【被害者】の目線に縛られなくなったと思う。
圧倒的な悲惨を(ガラスケースと数十年という年月を隔てて)直視した時、
【加害者】【被害者】という垣根は意味を持たなくなり、
ただただ「繰り返してはならない」という祈りだけが残ったのだと思う。

殺戮や残虐が取り返しのつかないものであればあるほど【加害者】は正視できないが、
それはしでかした事の重大さを認識している証拠だ。「正視したくない」という
心の負荷を乗り越えて、歴史に学んで、これから先どう生きるかに活かせば
良いのだと思う。

最も愚かなのは、【加害者】として引き起こした取り返しのつかない殺戮や残虐に
目をつぶりたいあまりに「なかったことにする」こと。

71年の時を経てさえ、アメリカ大統領が白人であったならば、広島を訪れて
原爆資料館を訪れ、慰霊碑に献花し、スピーチをし、被爆者と言葉やハグを交わす
ことなど、到底できなかっただろう。

第二次世界大戦において大いに被害者であり、かつ大いに加害者であった日本は、
双方の眼差しのバランスをとってしっかりと歴史に学び、より良き未来を創ることが
できるはずの国だ。

【被害者】でいることは簡単だ。【加害者】を責めていればいい。
思考を停止していてもできることだ。

過去の戦争の悲惨を学ぶことは、【被害者】【加害者】を超えるチャンスになる。

オバマ大統領から原爆に対する謝罪がないこと、
原爆資料館の滞在時間が10分間だったこと、
それらに憤ることは頑迷だとわたしは思う。
そんな頑迷は乗り越えて、より良き未来を創造するために、できることをしたい。



薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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| comments(0) | - | 17:22 | category: |
# 『若冲展』攻略メモ
わたしの『若冲展』は終わったので、3回行った者からの攻略メモを。

4月27日に行った時は15時前に着いて入場までが45分待ち。
5月10日には午前8時過ぎに並んで約300人め、9時25分には入室。
本日5月13日にもやはり8時に並んで約700人め(わたしの感覚です)、
9時半に入室。

(もちろんチケットは言うまでもなく事前入手です。チケットを買うために
何十分も並ぶのは致命的な時間のロスです!)

700人めでも、まず最初にエレベータで2階のプライス・コレクションに直行すれば、
『紫陽花双鶏図』が独り占めでした。1階の『動植綵絵』も、この時間に直行すれば
ゆったり見られました。

いずれにせよ10時半を過ぎると展示室内、グッズ売り場共に満員電車なので、
何としても最初の1時間で回ることをお勧めします。

今回は伊藤若冲の展覧会にしては非常に珍しく【個人蔵】が殆どありません。
(或いは今まで個人蔵だったものが岡◯美術館に買い占められちゃったか!
あり得なくない‥‥)ので、どういうことかというと、所蔵先別に鑑賞の作戦を
立てられるということです。

展示室は地下1階、地上1階、2階の3フロアに分かれています。
真ん中の1階が全部『動植綵絵』、2階の一番奥がプライス・コレクション。
他の部分はバラの作品が並べられています。

地下1階に集められている京都・細見美術館の所蔵品は基本的に年に1回以上、
大体全部を一気に見せてくれるので、それほどレアものではないです。

同じく地下1階に多くある京都・鹿苑寺のものも、やっぱり大体年に1回は
京都の相国寺にある承天閣美術館で一気に見せてくれます。ここは常設展示で
若冲の壁画が一部屋丸ごと見られるので、京都に行きさえすれば、美術館が
開いてさえいれば、若冲はんに必ず会えます。

今回、岡田美術館という新興の美術館の出展が多いです。ほとんどが地下1階。
神奈川県民でも行くのに1日仕事な、箱根の山の上の美術館ですが、ここは
今年後半に若冲の展覧会をやるとのことなので、温泉ついでに行けるようなら
今回必死になって見る必要はないでしょう。ちなみに個人的にお勧めは2階にある
『三十六歌仙図屏風』です。新発見、と騒がれた『孔雀鳳凰図』よりも。

MIHO MUSEUM は滋賀の物凄い場所にあります。【野越え山越え】状態なので、
ここのものは重点的に見ておきましょう。地下1階にも2点ありますが、
2階の『象と鯨図屏風』を必ずしっかり見ましょう。これは割と最近東京に
来たばかりなので、次はなかなか来ないかと。

京都国立博物館のものはどれくらいの頻度で展示されるかわたしは把握して
いないのですが、かなりの大規模展覧会でないと関東には来ないので、京都まで
行く機会の少ない人はしっかり見ておくといいと思います。2階の『果蔬涅槃図』、
水墨の代表作の一つですし。あ、地下1階の『乗興舟』は物凄く長いこともあって
ケースに寝かせて展示してあるのはかなりレアなので、ケースの前は混んでますが、
是非とも目に焼き付けましょう。

鹿苑寺以外のお寺の所蔵のものは全てレアです!重要文化財である『仙人掌群鶏図』は
年に1回の虫干しの日のみの公開だし、石峰寺の『虎図』は若冲忌の時に見られる
程度だったかと。地下1階、2階に散らばっています。

レアといえば、大抵の人にとっては佐野市立吉澤記念美術館蔵の『菜蟲譜』を全部
一気にケースで展示!は激レアです。若冲ファンであればあるほど、このありがたみは
わかるはず。舐めるように見てください、ファンからのお願いです。

1階の宮内庁所蔵の『動植綵絵』と2階のプライス・コレクションは次にいつ見られるか
わからないありがたいありがたいものなので、心して、そして覚悟して見てください。
プライス・コレクションは普段はカリフォルニアのプライスさんという大富豪が
おうちにしまい込んだり、地元の美術館に貸し出したりしています。
『動植綵絵』は普段は宮内庁の三の丸尚蔵館にしまい込まれています。

グッズ売り場は2階です。4月27日の16時半の時点でお会計1時間待ちでした。
10時半までに見終えてからグッズ売り場を回り、レジに並ぶ‥‥というのがオススメです。

取り急ぎ、珠麗でした。
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| comments(3) | - | 12:34 | category: |
# 4月『令嬢ジュリー』ワークショップ追加開催のお知らせ
3月『スカイライト』
4月『令嬢ジュリー』
5月『クローサー』


という3本のワークショップを連続で開催しますとアナウンスしたところ、
予想を大きく上回るお申し込みをいただいています。

この3本のワークショップの詳細はこちらをご覧ください。

4月『令嬢ジュリー』が特にご要望が多く、追加クラスを開催したいと思います。

追加クラス日程:2016年4月28日、29日、5月1日〜3日(計5日間)


日程以外の詳細はその他のワークショップと同様です。
どうぞこちらをご覧ください。

よろしくお願い致します!



薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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| comments(0) | - | 23:15 | category: WORKSHOPS |
# 今月末より『スカイライト』ワークショップです!
3か月連続ワークショップの第1弾『スカイライト』、いよいよ今月末からです!

3か月連続ワークショップの詳細はこちらをどうぞ。


『スカイライト』は3人芝居。
登場人物は30歳の女性キーラと、その元不倫相手のトム50歳と、
トムの息子エドワード18歳。
作品としてはキーラとトムの場面がメインになります。

去年ナショナルシアター・ライヴでご覧になった方も多いですし、
もしかしたら男性陣からは「役がない」と思われているかもしれません。

これまでにわたしのワークショップには40代以上の男性の参加も
ありましたが、やはり多いのは20代、30代。
実際に30代の俳優から直接「自分にはまだ早いのではないか」と
言われたこともあります。

実際、トムは50歳。
大学生の娘と18歳の息子がおり、レストラン経営を手広く展開する、
裕福な実業家。
そして、元モデルの妻を、病気で亡くしています。
しかも妻の病気が発覚したのは、
家族ぐるみで親しかったレストランの従業員キーラとの不倫が
妻に発覚した直後のことでした。
トムという役は、和解できないまま亡くなった妻への罪悪感と、
別れた後も忘れられないキーラへの想いの間でめちゃくちゃになる、
それはそれは大変な役です。

20代、30代の男性には確かに、ハードルが高いと思います。
というより、どんな俳優にとってもハードルが高いでしょう。
(ちなみに世界初演でトムを演じたのはマイケル・ガンボン。
『ハリー・ポッター』のダンブルドア校長です。)

しかし!

ナショナルシアター・ライヴをご覧になったらおわかりのように、
この芝居の特徴の一つは、30歳が大人で、
50歳がまるで子供であること。
トムは、粋がって見せたり完全に駄々っ子になったりと、
【50歳で子供もいる資産家】という色眼鏡で見てしまうと
痛い目にあう男です。

そして、キーラとトムは、その関係の基礎を、約20年の差がある
人生経験の部分に置いていません。

二人はこの芝居で一晩中ぶつかり合いますが、その基礎となっているのは、
互いに共有した過去、
そこからどうにかして歩み出そうと葛藤する現在の日々、
そして【幸せとは?】という問いへの、それぞれに相反する答え。
その背景には社会に対する、それぞれに相反した問題意識がしっかりと存在します。

男と女とは?
生きるとは?
愛する者への責任とは?
社会において人間は何を目指して生きるべきか?
そしてつまり、幸せとは?

『スカイライト』はそういった主題に丸裸&丸腰でぶつかってゆく、
とても大きな作品です。

そういった人間として向き合うべき大きな問いかけに年齢は関係ないと、
わたしは信じています。

また、実際に40代50代になった時に、
そのような大きな作品、大きな役に取り組むことができるよう、
20代30代で大きな役に取り組んでおく。
それこそワークショップでしかできない、
意義ある取り組みではないでしょうか。

物語の真ん中で物語を背負う、
そのために必要な【器】を培うのに、
早すぎることなどありません。

50歳で当たっても砕けてしまうような役に、
30代にして全力でぶつかって、粉々に砕け散っておく。
その経験は必ずやその俳優を鍛えてくれることでしょう。
俳優としても、人間としても。ひょっとして、男としても。

実は3つのワークショップとも、男性女性ともに【アクティング】参加の枠は
あっという間に定員に達しました。
『スカイライト』の男性【アクティング】枠だけが未だ定員に
達していません。
年齢が妨げとなっている方がもしいるのであれば‥‥と思い、
書きました。

ちなみに、冒頭に書いた「自分にはまだ早いのではないか」と
言ってきた俳優も、今回トム役にチャレンジすることになりました。

開催まで間がありませんが、引き続き、
『スカイライト』でトム役を演じたい!という俳優との出会いを、
求めています。


よろしくお願いします!



薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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| comments(0) | - | 20:52 | category: WORKSHOPS |
# 追記あり:2016年 薛 珠麗ワークショップ 3か月連続開催のお知らせ
3月14日付け追記:
4月『令嬢ジュリー』ワークショップの追加クラスを開催します。



『スカイライト』
『令嬢ジュリー』
『クローサー』
をテキストに、ワークショップを開催します

___________________________________

「翻訳劇の言葉は過剰」と言われることは少なくありません。

例えば英語で書かれた戯曲の場合、背景に
「全てを言葉にして出し合う」という文化があるため、
日本語を母語とするわたしたちには
「形容や修飾が、過剰」
「相手への関わり方が理屈っぽい」
「言わなくても良いことまで、いちいち言葉にして主張している」と
感じられることも多いかも知れません。
それは、わたしたちにとって馴染みの薄い価値観、習慣、社会のもと
書かれたものである故の、違和感なのかも知れません。

では、俳優が翻訳劇のこの【過剰さ】をそのまま演じてしまうと、
その演技さえも【過剰】になってしまうのでしょうか?
翻訳家としても演出家としても、わたしはそうは思いません。

優れた翻訳劇の言葉には、時に「過剰」と受け取られるくらいの
【熱】や【生命力】があるのだと、わたしは考えています。
人物が、目の前にある状況をどうにかしようと、探し、紡いだ
言葉が 結果的に「過剰」と受け取られるのは、人物がそれだけ切実に
何かを望み、もがいているから。

ならば、俳優がそういった言葉を完全に自分のものにし、
自由自在に操れるようになった その先には
非常に豊かな世界が、待っているのではないか。

台詞とは、人物がその瞬間の自分の想い、考え、信念を伝えるため
「これしかない!」と掴み出した言葉です。
いわば、その瞬間に初めて生まれ出た言葉。
それを瞬時に理屈へと構築し、それを使って相手を説得します。
それを繋ぎ、互いに応酬することで、何が起きるかというと、
人物同士の関係性が衝動化します。
新鮮で驚きに満ちた展開をどんどん見せるようになるのです。
そして関係性が衝動化してゆくと、物語は逆に、必然性が強まります。

観る者に強く訴えかける演劇は、このようにして生まれるのでは
ないでしょうか。

ここに、3本の戯曲があります。
いずれも、人物たちが互いに、言葉を武器とし、自らの全存在を
かけて戦う様子を描いた戯曲です。甲乙つけがたい、たいへん
刺激的な3本です。

その3本をテキストに、3か月連続でワークショップを開催します。
優れた翻訳劇の力強い言葉を、自分のものにしてみませんか。

___________________________________

2016年 薛 珠麗 ワークショップ


■ 戯曲紹介 ■

第1期:
『スカイライト』
2015年「ナショナル・シアター・ライヴ」でも取り上げられて
話題に。デヴィッド・ヘアー作、1995年ロンドン初演。
最下層の地域で教える教師キーラと 裕福な実業家トムは、かつて
不倫関係にあった。トムの妻が病死した今、罪悪感がある種の
絆と化してしまった二人は、激しい愛憎を互いにぶつけ合う。

第2期:
『令嬢ジュリー』
近代演劇の父とも称されるスウェーデンの作家アウグスト・
ストリンドベリの1888年作品。気位の高い伯爵令嬢ジュリーは、
上昇志向の強い従者ジャンを蔑みつつ、同時に強く惹かれてもいる。
嵐のような求め合いの末、行き場がなくなったジュリーに、
ジャンはついに「命を絶て」と言い渡す。

第3期:
『クローサー』
パトリック・マーバー作、1997年ロンドン初演。2004年には
ナタリー・ポートマン、ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、
クライヴ・オーウェン出演で映画化。野良猫のようなストリッパーと、
夫と別居中の女性カメラマン。かつて小説家を夢見た新聞記者と、
もてない皮膚科医。2人の女と2人の男による【総当たり戦】。
どんなに求めても、奪っても、叫んでも訴えても、満たされぬまま
4人はどんどん 孤独へと落ちてゆく。

■ 講師紹介 ■

薛 珠麗(せつ しゅれい)
生まれも育ちも横浜市。国際基督教大学卒業の翌日、tptに参加。
海外演出家のアシスタント/演出補、戯曲翻訳、演出を手がけた後、
独立。演出作品にtpt『蜘蛛女のキス』、ギィ・フォワシィ・
シアター『ストレス解消センター行き/母からの手紙』、
音楽実験室 新世界『楽屋〜流れ去るものはやがてなつかしき』、
PLAY/GROUND Creation『ブルールーム』。翻訳作品に
tpt『エンジェルス・イン・アメリカ』『橋からの眺め』
『ブルールーム』、パルコ劇場『ハーパー・リーガン』、
帝国劇場『レディ・ベス』など多数。
『バーム・イン・ギリヤド』で第1回小田島雄志翻訳戯曲賞受賞。


ワークショップ詳細

■ 期間 ■

それぞれ5日間のワークショップになります。

第1期『スカイライト』ワークショップ:
3月29日(火)〜4月2日(土)

第2期『令嬢ジュリー』ワークショップ:
4月21日(木)〜25日(月)

『令嬢ジュリー』追加クラス:4月28日、29日、5月1日〜3日

第3期:『クローサー』ワークショップ:
5月16日(月)〜20日(金)


■ 時間 ■

13:00〜20:00


■ 場所 ■

新宿から電車で10分以内の駅を最寄り駅とする稽古場になります。


■ 参加形態 及び 定員 ■

いずれのワークショップも
【戯曲読解 及び ディスカッション】と
【実際に場面を演じてみる】が主な内容になります。
参加形態は2つあります。

【アクティング】参加:
5日間の期間中、毎日、実際に場面を演じる機会が
あります。
全日程ご参加いただける方が対象になります。
(遅刻早退に関してはご相談ください)
定員:各ワークショップとも男女6名ずつ、計12名(先着順)

【ディスカッション】参加:
実際に場面を演じる機会はありませんが、
戯曲読解におけるディスカッションを牽引して
いただけたらと思います。
「全日程は参加できないけど‥‥」
「1日しか参加できないけど戯曲が読んでみたい」
という方も、お待ちしています。
定員:各ワークショップとも12名前後(先着順)


■ 参加費 ■

【アクティング】 15000円

【ディスカッション】8000円
(NGのある方はご相談ください)


■ 募集対象 ■

【アクティング】参加:俳優
【ディスカッション】参加:俳優、スタッフ


■ 応募方法 ■

以下をメールでお送りください。
参加は【先着順】になります。

1)ご希望のワークショップ 及び 参加形態
2)お名前(ふりがな)
3)年齢
4)顔のわかる写真
5)パソコンからのメールが受け取れるメールアドレス
6)お電話番号

送り先:
shurei.official@gmail.com
ご質問、ご相談もこちらのアドレスへどうぞ。
(こちらのアドレスから受信できるよう設定をご確認ください)

尚、ご応募いただいてから24時間以内に返信がない場合、
お手数ですが、再度ご連絡をお願いします。
上記アドレスか、または Twitter へDMをお願いします。


第2期、第3期ともまだ先ですが、キャンセルはいつでも
お受けできますので、「予定はまだ決まらないけど興味は
ある」という場合は、まずご応募いただけたら幸いです。

___________________________________

お待ちしています!


薛 珠麗(せつ しゅれい Shurei Sit)
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| comments(0) | - | 20:24 | category: WORKSHOPS |
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